14日エントリではコーエンが感染症学者について投げ掛けた疑問への回答を紹介したが、そこで紹介した回答者が大学院で学んだ感染症学に見切りをつけて別の道に進んだ人だったのに対し、ジョセフ(Joseph)という本職の感染症学者*1が自ブログで応答エントリを上げ、それをコーエンがリンクしている。そちらでは、やはりというべきか、14日エントリで紹介した回答とは時に正反対のことが述べられている。
以下はその応答エントリの概要。
- 感染症学者の給与
- 医学部との繋がりがあるため、大学の平均を概ね上回る。ただ、公衆衛生学部の人は恥ずかしくなるほど低い。人々は彼らから良いニュースを聞きたがるため、良いニュースを生み出すプレッシャーがあり、この界隈のスキャンダルは大体が過度に楽観的な予測から生じる。
- 感染症学者の政治志向
- 公衆衛生は分野として効率的な政府に依拠している。中小企業団体の会長が右寄りであるのと同じくらい、感染症学者は左寄りである。ミーガン・マッカードルだったと思うが、政府が効率的である最良のモデルは公衆衛生(ワクチン接種、公的な衛生設備、等々)である、と指摘した。
- 経済学では経済学者であることよりも国籍がその人の政治観を占う上で重要だが、感染学でも同じか?
- 例えばトップクラスの計量経済学者と比べて、予測モデルの不確実性をどの程度理解しているか?
- 自分の経験から言えば、かなり理解している。インペリアル・カレッジ・モデルの予測範囲はIHMEモデル*2よりかなり大きい。それは、政府と住民の反応関数だけに基づいた予測より10倍優れている。
- ポール・クルーグマンが指弾する「ゾンビ経済学者」に相当する「ゾンビ感染症学者」はいるか?
- フィリップ・テトロックの予測に関する研究を学んだ者はどれくらいいるか?
ジョセフはまた、本ブログの13日エントリで紹介したコーエンの感染症モデル批判に対し、彼の批判しているのは医療経済学者が構築したIHME(ワシントン大学保健指標評価研究所)モデルであって感染症モデルでは無いのでは、と反論しており、その点を別エントリを立てて改めて強調している*3。