2016-09-01から1ヶ月間の記事一覧

緊縮財政の一般理論

クルーグマンがサイモン・レンールイスの今年5月の表題の論文(原題は「A General Theory of Austerity」)に言及している*1。 以下は同論文の結論部。 This paper has argued that there was no good macroeconomic reason for austerity at the global lev…

コント:ポール君とグレッグ君(2016年第4弾)

マンキューが久し振りにブログでクルーグマンに言及した。 グレッグ君 このブログをいつも読んでくれている人は、僕とポール君の意見が食い違うことが良くあることを知っている。しかし今日、このエントリでは、トランプの2人の経済顧問が出した分析について…

さよならジュピター

コチャラコタが先週末のブルームバーグのコラムで、ゼロ金利からの脱出を木星からの離陸に例えている。 Over the past couple decades, the Bank of Japan has tried time and again to get interest rates up from zero, only to discover that the zero bo…

十分統計量アプローチはルーカス批判を回避することができるか?

Economist's Viewの9/26付のリンク集でなぜかセントルイス連銀の半年前の表題の記事がリンクされている(原題は「Can the Sufficient Statistic Approach Avoid the Lucas Critique?」。ただしリンクのタイトルは「Making Models Simple, but Not Too Simple…

インターネットは自宅警備員を増やした負の技術ショックだったのか?

EconospeakのProGrowthLiberal(PGL)が、(昨日紹介した)David Glasnerのエントリの以下の一節が特に気に入った、として引用している。 Romer’s most effective rhetorical strategy is to point out that the RBC core of modern DSGE models posit unobs…

「すべてのモデルは間違い」の語源

David Glasnerが、ローマーのマクロ経済学批判をとば口に、以下の論陣を張っている。 こうした批判に対する現代マクロ経済学側からのお決まりの反論は、すべてのモデルは間違っている、というものである。その中でも自分たちのモデルはミクロ的基礎付けがな…

あるマルクス経済学者の技術ショック擁護論

クリス・ディローが、本ブログの17日エントリで取り上げたローマーのマクロ経済学批判と、21日エントリで取り上げたサイモン・レンールイスのブログエントリについて以下のように書いている。 In his attack (pdf) upon macroeconomic theory, Paul Romer is…

大手銀行は安全になったのか?

というサマーズらの論文に、マンキューが、直近のBPEA(Brookings Papers on Economic Activity)の会合で最も興味深い論文だった、としてリンクしている。論文の原題は「Have big banks gotten safer?」で、著者はNatasha Sarin、Lawrence H. Summers(いず…

コンビニ人間の経済学

Dietz Vollrathが、サービス部門というのは生産性はそれほど低くないかもしれない、という考察を導き出したAlwyn Youngの2014年のAER論文(WP)を紹介している。 エントリの冒頭でVollrathは、一般にサービス部門の低成長性はボーモルの病で説明される、とい…

現代マクロ経済学の脆弱性

サイモン・レンールイスがポール・ローマーのマクロ経済学批判を取り上げ、ミクロ的基礎付けに対して愛憎半ばする感情を持っていると自認する通り、肯定と否定をないまぜにした評価を下している。 Yes it is unfair, and yes it is wide of the mark in plac…

コックとマクロ経済学、その料理と給仕

昨日紹介したエントリでサイモン・レン−ルイスは、政策との関わりについての初めての苦い体験を以下のように語っている。 At its best, NIESR was an interface between academic macro and policy. It worked very well just before 1990, where with colle…

ミクロ的基礎付けとDSGEへのレンールイスの愛憎

サイモン・レンールイスが、自ブログMainly Macroで政治経済に関する考えを広く一般に伝えた功績で、ニューステーツマン/SPERI賞を受賞した。それを機にレン−ルイスが、自分のキャリア人生を振り返ったエントリを上げている。 エントリによると、彼はケンブ…

ミクロ的基礎付けのいかさま

昨日紹介したローマー論説を受けて、Mean Squared Errorsというブログがごく簡単なマクロモデル小史を書いている(H/T Economist's View)。 Forty years ago, the name of the game in macroeconomics wasn't theory at all; it was forecasting. And it wa…

迷走するマクロ経済学

昨年から主流派マクロ経済学に痛撃を加えている*1ポール・ローマーが、「The Trouble With Macroeconomics」という論文をネットに掲載して話題を呼んでいる。 以下はその冒頭部。 Lee Smolin begins The Trouble with Physics (Smolin 2007) by noting that …

日本にとってより良い経済政策

というProject Syndicate論説をスティグリッツが書いている(H/T Economists's View)。原題は「A Better Economic Plan for Japan」。 その冒頭でスティグリッツは、経済成長はそれ自身が目的ではなく、問題なのは生活水準であるが、日本は人口増大を抑制し…

確率的ボラティリティを取り入れたDSGEモデルのリアルタイム予測の評価

というNBER論文をDieboldらが書いている(ungated版)。原題は「Real-Time Forecast Evaluation of DSGE Models with Stochastic Volatility」で、著者はFrancis X. Diebold(ペンシルベニア大)、Frank Schorfheide(同)、Minchul Shin(イリノイ大)。 以…

債務と商品市場における名目硬直性

というNBER論文をキドランドらが書いている(ungated版)。原題は「Nominal Rigidities in Debt and Product Markets」で、著者はCarlos Garriga(セントルイス連銀)、Finn E. Kydland(UCサンタバーバラ)、Roman Šustek(ロンドン大学クイーン・メアリー…

ランダム化比較試験に対する理解と誤解

というNBER論文をアンガス・ディートンらが書いている(全文も公開されている)。原題は「Understanding and Misunderstanding Randomized Controlled Trials」で、著者はAngus Deaton(プリンストン大)、Nancy Cartwright(ダラム大)。 以下はその要旨。 …

インフラ投資の政策的枠組みの5つの問題

サマーズが米国のインフラの状況をソ連のチェルノブイリに喩えている(H/T Economist's View)。 The case for infrastructure investment has been strong for a long time, but it gets stronger with each passing year, as government borrowing costs d…

高額紙幣の廃止とマイナス金利政策

以下の本を出版したケネス・ロゴフが、プリンストン大学出版局の経済ブログでインタビューに答えている(その1、その2*1)The Curse of Cash作者: Kenneth S Rogoff出版社/メーカー: Princeton Univ Pr発売日: 2016/08/30メディア: ハードカバーこの商品を…

長期停滞1と長期停滞2

マイケル・スペンスがProject Syndicate論説で長期停滞を取り上げ、我々が直面している長期停滞を長期停滞1(SS1)と長期停滞2(SS2)に分類している。 長期停滞1とは、将来の成長と安定を危うくすること無しに短期的に対処することが難しい持続的な成長減速…

FRBが学び得た大恐慌からの教訓:1932年の公開市場操作と量的緩和の比較

というNBER論文をマイケル・ボルドーらが書いている(昨年4月時点のWP)。原題は「A Lesson from the Great Depression that the Fed Might have Learned: A Comparison of the 1932 Open Market Purchases with Quantitative Easing」で、著者はMichael Bor…

イエレンはモデルを過信している?

ここで紹介したエントリでジャクソンホールの結果に対し3つの失望を表明したサマーズが、そのうちの2点目(「既存の政策ツールに対する危険な自己満足」)に焦点を当てたエントリを上げている(H/T Economist's View)。 Chair Yellen, relying heavily on r…

ロボット化は長期停滞の特効薬となるか?

昨日紹介したBOEブログ記事では、ロボット化がもたらし得るプラスの面として、長期停滞からの脱却を挙げている。 On the plus side, if you are worried about secular stagnation then robots offer you a couple of reasons to be cheerful. First up, if …

ロボット化は資本分配率を押し上げるか?

というテーマをBOEブログが取り上げている(H/T Mostly Economics)。著者はリサーチ部門(Research Hub)のJohn Lewis。 以下はその一節。 So to argue that robotisation will benefit capital at the expense of labour you have to believe there is som…

ストック−フロー一貫モデルと従来の計量経済モデルの違い

サイモン・レン−ルイスが、SFCモデル(Stock-Flow Consistent model)なるモデルをブログで批判的に取り上げている。レン−ルイスがWikipediaから引用するところによれば、SFCモデルとは、「a family of macroeconomic models based on a rigorous accounting…

ジャクソンホールの結果に失望した

とサマーズが書いている(H/T Economist's View)。 彼は失望した点として 短期的な政策シグナルが引き締め方向に走っているが、それは最終的にはFRBの信認と経済の両方を傷付ける結果に終わると思われる。 長期に関する議論からは、既存の政策ツールに対す…

FRBはバランスシートを大きいままにしておくべきか?

ジャクソンホールねたでは、バーナンキの表題のブログ記事(原題は「Should the Fed keep its balance sheet large?」)も話題になっている(H/T Economist's View、本石町日記さんツイート)。 以下はその一節。 Because the size of the Fed’s balance she…

リカーディアンとリカーディアンもどきとFTPL

引き続きシムズ論文からの引用。シムズはFTPLについて以下のように説明している。 Increases in the quantity of nominal debt occur through government deficits, and, depending on the reasons for the deficit, the increase in nominal debt may chang…

1980年代のブラジルと現在の日本の共通点

昨日に引き続き、クリストファー・シムズのジャクソンホールの論文から。今日は「中銀の独立性(CENTRAL BANK INDEPENDENCE)」と題された第3節の一節を引用してみる。 The 1980’s in Brazil provide an example of a situation where, without any direct i…