というProject Syndicate論説をスティグリッツが書いている(H/T Economists's View)。原題は「A Better Economic Plan for Japan」。
その冒頭でスティグリッツは、経済成長はそれ自身が目的ではなく、問題なのは生活水準であるが、日本は人口増大を抑制しつつ生産性を上げるという点で2008年以降は欧米よりもむしろ上手くやっているので、日本の経済政策への批判の一部は当たっていない、と述べている。とはいえ、日本はもっと良くなれるはずだ、という日本人の考えに自分も同意する、として、インフレ達成、信頼の回復、成長率の押し上げに失敗した最近の政策に代わるものとして以下の処方箋を示している。
- 大規模な炭素税
- 政府債務の金利上昇対策
- 上記の対策を講じても需要不足が解消しないならば、以下の方策を取れば良い。
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- 消費税減税
- 投資税額控除の拡大
- 中所得者層への扶助の拡大
- 技術や教育への投資の拡大
- 財源は紙幣の発行で――インフレを懸念する向きがあるが、日本はそうした懸念が現実化することを必要としている。
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また、安倍首相の現行の政策については以下のように評している。
- TPPによる農業部門の改革
- 米国では自国の農業政策の歪みがTPPによって改善すると考えている者は誰もいない。
- 農業の生産に占める比率は僅かなので、効果は限られるだろう。
- 他部門でのこうした改革は、若い日本人に才能を発揮させるために推進すべきだが、TPPはそのための最善の策ではない*2。
- 日本の問題は需要面だけではない。時間当たり生産のデータは、サービス部門の供給面に問題があることを示している。多くの製造業部門で見られた印象深い発明の才がサービス部門ではまったく見られない。医療業界での診断ツールの開発といったサービス部門での技術発展が日本でのニッチ産業となる。
- 労働力人口への女性の完全かつ平等な統合
- 正しい政策。上手く行けば、成長と生産性を押し上げるだろう。
最後にスティグリッツは、四半世紀の停滞を経ても日本は世界第三の経済であり、国内の生活水準を引き上げる政策は他国の需要と成長を刺激するだろう、と述べている。また、商品や技術を世界に輸出してきたように、上手く行けば成功した政策を世界に輸出できるだろう、とも述べている。