という可能性についてタイラー・コーエンがMRブログで論考し、この問題に外野の野次に怯まずに正面から取り組んでいる、という称賛の言葉を添えてマーチン・ウルフのFT論説記事にリンクしている。ウルフはそこでブランシャールのPIIE論説記事とチャールズ・グッドハートらのvoxeu記事にリンクしている。
ブランシャールは危機後に高インフレが生じるケースとして、以下の3つの要因が組み合わさることを挙げている。
ブランシャールはこれらがすべて生じる可能性は小さく、低インフレが続く公算が大きいとみているものの、高インフレの可能性もゼロではない、としている。
一方、グッドハートと共著者のManoj Pradhanは、2021年に5%以上、ひょっとすると10%台のインフレが生じると予想し、その理由として以下の3つを挙げている。
- QEの時にも高インフレが懸念されたが、その懸念は当たらなかった。しかし、QEでは注入されたマネーが超過準備の形で銀行システム内に留まり、インフレに関係するより広義の貨幣集計量に浸透していかなかったのに対し、今日の政策では広義の貨幣集計量を直接増やす形でキャッシュフローの注入が行われている。
- 世界経済は速やかにコロナ発生前の水準に戻るだろう。その回復スピードが速いほど、現在の政策による現金注入は景気を押し上げるものとなる。
- 世界経済における中国の役割は、かつてのデフレの輸出者から今はより中立的なものに変わっており、今後はインフレ的な存在になるだろう。
ウルフは、ブランシャールやグッドハートらが懸念する高インフレシナリオを避ける術として、以下を提案している。
ウルフはまた、グッドハートらの言う構造変化はあり得るものの、自動化の加速による労働の立場の一層の弱体化、危機で打撃を受けた投資のもたつきによる貯蓄過剰の持続、の方が可能性が高いのではないか、という見方を示している。財政支配の懸念についても、中銀の独立性は多くの人の支持があるので維持されるだろう、と述べている。