インフラ投資の政策的枠組みの5つの問題

サマーズが米国のインフラの状況をソ連チェルノブイリ喩えている(H/T Economist's View)。

The case for infrastructure investment has been strong for a long time, but it gets stronger with each passing year, as government borrowing costs decline and ongoing neglect raises the return on incremental spending increases. As it becomes clearer that growth will not return to pre-financial-crisis levels on its own, the urgency of policy action rises. Just as the infrastructure failure at Chernobyl was a sign of malaise in the Soviet Union’s last years, profound questions about America’s future are raised by collapsing bridges, children losing IQ points because of lead in water and an air traffic control system that does not use GPS technology.
The issue now is not whether the US should invest more in infrastructure but what the policy framework should be. There are five key questions.
(拙訳)
インフラ投資をすべき理由が強力なものとなって久しいが、政府の借り入れコストが下がり、不作為の継続により追加的な支出の増加のリターンが上昇したことから、それは年々さらに強まっている。成長率が危機前の水準に自然には戻らないことが明確になるに連れ、政策行動の緊急性は増している。チェルノブイリのインフラの失敗が末期を迎えたソビエト連邦の沈滞の象徴だったように、崩壊する橋、水の中の鉛のせいでIQの点数が低下しつつある子供たち、およびGPS技術を使わない航空管制システムは、米国の未来に対して根本的な疑問を提起している。
今や問題は、米国がインフラにもっと投資すべきかどうかではなく、政策的枠組みはどうあるべきか、になっている。その点に関しては5つの重要な問題がある。

その5つの問題と、それに対するサマーズの回答は以下の通り。

  1. どの程度投資を増やす必要があるか?
    • GDPの1%の増額=10年で2.2兆ドル
  2. 優先順位の最も高いものは何か?
    • メンテナンスが延び延びになっているところへの投資が、リターンが最も高く、かつ、安全。大規模な計画や許認可が必要無いのですぐに取り掛かれる。また、そうした箇所は当然ながらインフラの使用頻度が高い。
  3. 投資資金の調達方法?
    • インフラ投資は経済の伸長と税基盤の拡大により自らを賄う。マッキンゼー・グローバル・インスティテュートは投資のリターンが20%と見積もっている。仮に投資のリターンが6%で、政府がGDP1ドルにつき25セントを回収するとしても、リターンは1.5%となる。これは30年満期においても実質借り入れコストを大きく超えている。
    • 収入が欲しいと言うのなら、インフラの利用者に課金すべし。
  4. 民間部門をどう扱うべきか?
    • インフラ投資の中には民間が責任を負うべきものもあり(例:石炭火力発電を再生エネルギー発電で置き換える、ブロードバンド網の拡大、パイプラインの建設)、規制に関する意思決定を簡素化し不確実性を減らすような政策の枠組みは、そうした投資を促す。また、空港や道路のように民間資金活用の実験が正当化されるインフラもある。
    • しかし、政府の借り入れコストが民間のインフラ投資者が欲するリターンを大きく下回っていることは要注意。民営化が説得力を持つのは、インフラの建設と運営に関して明らかな民間の優位性がある場合のみ。
  5. インフラ投資が効率的に行われることをどうやって保証するか?
    • この問題については銀の弾丸は無い。
    • オバマ政権の財政刺激策で適用された透明性を範とすべし。
    • 積極的なインフラ投資論者も、保守派の懐疑主義に歩み寄り、規制の簡素化、費用便益分析の義務化を受け入れるべし。予算獲得に当たってはコスト最小化を旨とすべし。