サマーズ「CBOのインフラ投資レポートは誤審」

サマーズが、議会予算局(CBO)の直近のインフラレポートミスジャッジだと猛抗議している
彼は自分の見解とCBOレポートの見方を以下のように対比させている。

My views come in part from a simple calculation. Imagine an infrastructure project that costs $1 and yields a modest 5 cents a year in real return forever, in terms of higher GDP. The project thus has a 5 percent social rate of return. Tax collections will rise by about 1.5 cents a year. With the indexed bond market suggesting federal real borrowing costs that are negative for 10 years and 50 basis points for 30 years, the government will come out ahead on the investment. Now, as Brad DeLong and I pointed out a few years ago, matters are more complex than this particularly because capital depreciates, and because infrastructure projects have other effects, but the basic point continues to hold.
So, I was very surprised to read the June CBO report on the consequences of federal investment. It assumes, from its reading of the literature (also here), as its central base case what it calls a 5 percent rate of return on infrastructure investment but then finds that the payback effect of infrastructure investment on the federal deficit is very small, contradicting my earlier claims and more importantly raising doubts about the desirability of a big infrastructure push.
(拙訳)
私の見解は、一つには単純な計算に基づいている。1ドルの費用が掛かり、年間5セントというそこそこの実質リターンを、GDPを高めるという形で恒久的にもたらすインフラプロジェクトを考えてみよう。即ちこのプロジェクトは5%の社会リターンをもたらすことになる。税収は年間1.5セントほど増加するだろう。物価連動債市場が示す連邦政府の実質借入費用が、10年についてはマイナス、30年については50ベーシスポイントであることを考えると、政府は投資で得をすることになる。ただし、ブラッド・デロングと私が数年前に指摘したように、特に資本が減耗すること、および、インフラプロジェクトにはそれ以外の影響もあることから、実際の話はもっと複雑であるが、前述の基本的な点はそのまま成立する。
そのため、連邦政府の投資の効果について書かれた6月のCBO報告書を読んで、私は非常に驚いた。従来の研究ここも参照)を基に同報告書は、主要標準ケースとしてインフラ投資への5%のリターンと称するものを仮定しているが、連邦政府財政赤字への見返りの効果は非常に小さいという結果を見い出している。これは私の前述の主張と矛盾するほか、より重要なことに、大きなインフラ投資を推進するのが望ましいという点に関して疑問を提起している。


その上でサマーズは、報告書の読み込みやCBO職員と話し込んだ結果、自分とCBOの主張が食い違った理由として、同じ5%のリターンと言いつつその内容が両者で違っていることが分かった、と述べている。具体的には以下の点を指摘している。

  • CBOは資本が1ドル多いと生産が5セント多くなる、という意味で5%のリターンという言葉を使っている。これは公的資本への投資が5%のリターンを稼ぐ、という仮定とはかなり違う。
    • 例えば、民間部門で標準的に行われる減耗の控除をCBOはリターンの計算の際に行っていない。
    • また、投資されたドルが資本に転じるには何年か掛かるという彼らの(疑わしい)仮定では、リターンが減少すると考えるのが自然。
    • 以上の要因を調整すると、CBOは実際には2%強のリターンしか仮定していないことになる。
  • そもそも5%という数字が妥当かという点については、CBOの推計方法に疑義がある。
    • CBOは、GDPの公的資本に対する弾性値というマクロ計量経済的な推計を基にしている。しかしそうした推計には、分散不均一性、同時性、外生変数の変動が限られていること、といった様々な問題がある。
    • サマーズ自身は、個々のインフラプロジェクト事例(道路の窪みの修復、ダムの建設、水道システムの修繕)の積み上げによる推計を好んでいる。そのようなボトムアップの手法を取った場合、公共投資の社会的リターンは2%よりもかなり高いと誰でも結論するのではないか――もちろん、これは判断の問題であるが。

さらにサマーズは、上記よりは重要性の低い問題として、以下の点を指摘している。

  • CBOの研究における公共投資の財政への負の影響の多くが、財政赤字に伴う金利上昇の仮定から来ている。その仮定はかつては自然なものだったが、現在のように流動性の罠に陥っていて、おそらくは長期停滞にも陥っている状況下では説得力に欠ける。
  • CBOは、州や地方政府の投資が連邦政府の投資によってクラウドアウトされることを仮定して、連保政府の投資のリターンを切り下げている。その一方で、州や地方政府の借り入れが減少するプラスの効果を明示的に考慮していない。
  • CBO財政赤字への影響を見ているが、より注視すべきは債務GDP比率への影響。

ちなみにサマーズはこの論説の冒頭でCBOは国の宝だと述べているが、これにデロングが反応し、リブリン、ライシャワー、オルザグ、エルメンドルフの下のCBOは国の宝だったかもしれないが、他の局長の時はそうでもない、と書いている。