について「Corporate profits are near record highs. Here's why that’s a problem.」と題した論説でサマーズが論じている(H/T Economist's View;初出はWaPoのWonkblog)。
記事の冒頭でサマーズは、米国企業の利益率が史上最高に近いこと、利益のうち資本に回る割合も同様であること、および、トービンのqレシオやGDPに対する比率で見た株価も歴史的に見て高い水準にあることを記している。これらのことは、資本の限界生産力、即ち、新規設備投資の見返りが非常に高いことを意味しており、一見すると、サマーズが主唱する長期停滞仮説と矛盾する。というのは、長期停滞仮説の中核には、投資が不活発であることが慢性的な総需要不足につながる、というストーリーがあるからである。
これについてサマーズは、安全資産の利率が低いこと、および、企業の設備投資が出ていないことを指摘している。これは上記の話と矛盾する現象であるが、サマーズはこの矛盾の説明候補として以下の3つを挙げている。
- 設備投資のリスクが高まった
- リターンの高さはリスクの高まりを補償するものに過ぎず、設備投資の魅力が高まったことを意味するわけではない、という説明。
- この説明には2つの欠点がある:
- VIXなどの株式のボラティリティ指標のようなリスクの代理変数は特に最近上昇していない
- 資本のリターンの不確実性が高まったというのなら株式の魅力はむしろ低下したはずだが、2009年春以降の7年間で250%上昇している
- 高い利益率は資本の生産力の高まりではなく、独占力の高まりを反映している
独占力による説明だけが説得力を持つことに鑑みると、経済学者、とりわけマクロ経済学者は市場の力の拡大という問題に注目する必要がありそうだ、と述べてサマーズは論説を締め括っている。
個人的には、企業寄り、市場寄りとされるサマーズからこういう(宿敵)スティグリッツもどきの言葉が発せられたことがやや意外であった。民主社会主義者を自称する人が大統領候補として支持を集めるようになった時代の移り変わりとサマーズも無縁ではいられないのかもしれない。