IT関係者と経済学関係者の意見交換会開かる

昨日都内で、情報技術関係者と経済学関係者の会合が開かれた。ビッグデータ処理など情報技術においても経済学が無視できなくなっており、同時に経済学でも高度な情報技術がますます必要とされていることから、両者の意見交換会を開いてお互いの分野の交流を深めようという初の試み。
まず、経済学関係者から、経済学理論の発展の歴史の説明があった。説明の最後に登壇者は、経済学の政策への応用の現状について以下の課題を指摘した。「このように経済学はますます高度な数学を使うようになっており、常に最先端の理論に追随していくことの重要性が日々増している。しかし残念ながら、日進月歩の経済学理論を現場で応用できるような一流の研究者が、日銀の審議委員をはじめとする政策決定の現場に浸透していない。それが今の日本の問題だ。」
これに対し情報技術関係者からは、「最先端の技術の進歩の重要性への認識は我々も同じだが、一方で、『枯れた技術』という概念も重視している。即ち、安定性が重視される分野では、最先端の技術ではなく、ある程度実績のある古い技術を使うべき、という考え方だ。経済学など学問の最先端では、ある研究者の結果が別の研究者によって否定されるなど、まだ流動的な部分が多いと聞く。その点では、必ずしも最先端の研究者が政策の現場にいる必要は無く、政策担当者は『枯れた経済理論』を使う、ということで良いのではないか。経済学では比較優位の原則というのがあるが、それに従えば、一流の研究者は最先端の研究を行い、政策関係者は既にコンセンサスが得られた理論に基づいて政策を実施する、という棲み分けができるのではないか」という意見が出された。
それに対し経済学関係者は、「経済学を語る資格があるのはやはり一流の業績を上げた研究者に限られ、それ以外の経済学に関して一知半解の知識しか有していない人が経済学の名の下に政策を論じるのは問題。我々のうち心ある者は、一流の日本人経済学者のリストを一流の学術誌への投稿実績などに基づき常に最新の状態に更新しているので、政策担当者も心してそのリストを見てほしい」という認識を示した。そして、「我々は最先端の経済理論が常に正しいという立場に立脚しており、今さらケインズ経済学やIS-LM理論で政策を論じるなど以ての外である」と付け加えた。
これについてある情報技術関係者が、「ただ、サマーズやクルーグマンなど、ケインズ経済学やIS-LM理論は今も有効と言う経済学者もいるが…」と言いかけたところ、「それでも彼らは経済学者であり、やはり経済学者でない人が経済学を語るのとは訳が違う。繰り返しになるが、経済学を語る資格があるのはそれ相応の勉強と研究を経た人に限られる、というのが我々の立場だ」と経済学関係者が即座に反論した。
この時「イスラム教のファトワーかよ」というヤジが客席から上がり、経済学関係者側の登壇者が激高する一幕が見られた。
その後、情報技術関係者が、「我々もハードやOSなどインフラが変われば使う情報技術を変えていく。しかし経済学ではむしろ、経済状況が変わっているのに、その分野の最先端理論だからと言って同じ理論を使い続けている例も見られる。直近の事例で言えば、消費増税の影響を論じる際に、金利が何パーセントもあった時代の理論をそのままゼロ金利の現状に適用するのは如何なものか、という気もする」と述べたところ、その登壇者はさらに激高し、「消費増税を延期するようなことがあれば、経済学の原理がいずれ日本経済に無慈悲な鉄槌を下すであろう」と言い捨てて足早に会場を後にした。
同会合の次回の開催予定は未定。