とサマーズが書いている(H/T Economist's View)。
彼は失望した点として
- 短期的な政策シグナルが引き締め方向に走っているが、それは最終的にはFRBの信認と経済の両方を傷付ける結果に終わると思われる。
- 長期に関する議論からは、既存の政策ツールに対する危険な自己満足が伺える。
- 現在の金融政策の枠組みの大きな変化を真剣に受け止めていない。
の3点を挙げているが、今回のエントリで焦点を当てたのはそのうちの一点目である。
彼はまず、FRBのこれまでの経済展望が甘かったため、金利予想が市場予想を上回って推移してきたことを指摘している*1。そして、2%のインフレ目標は上下対称だと言うならば、かつ、今の経済は強いというならば、なぜインフレが本当に2%を超えそうになるまで利上げを待たないのか、というここで紹介した議論を繰り返している。インフレ予測指標の現状を見ると、BEIは1.2%近辺にあるほか、サーベイ結果の示すエコノミストや消費者の長期インフレ予想は過去最低水準に近く、しかも昨年はむしろ低下傾向にあったという。
その上でサマーズは、短期の政策に関するさらなる注意点として以下を指摘している。
- 現時点の実質中立金利がゼロ近傍にあり、しかも低下傾向にある、という推計結果からすると、現在の政策が非常に拡張的かどうかは大いに疑わしい。
- 生産性の伸びの鈍化には履歴効果*2が寄与しているため、需要を高めに成長させることによって供給面でも持続的な恩恵がもたらされる、という説には説得力がある。
- 実質中立金利が2%で安定していると思われた時に2%のインフレ目標が適切だったと言うならば、実質中立金利がゼロで不安定な時にはより高いインフレ目標が適切となるはず。
- インフレが2%を超えるリスクは非常に小さいと思われるが、対照的に景気後退のリスクは極めて深刻である。
- インフレ予想が硬直的で、経済のスラックにインフレが非感応的であることからすると、失業率が4.5%近辺になるとインフレが加速する、というこれまでの考えがさらに怪しくなってくる。