2018-05-01から1ヶ月間の記事一覧

ハト派、タカ派、中間派の人格形成

「Perceived FOMC: The Making of Hawks, Doves and Swingers」というNBER論文をマイケル・ボルドー(Michael D. Bordo)が書いている(ungated版)。共著者はフランス銀行のKlodiana Istrefi。 以下はその要旨。 Narrative records in US newspapers reveal…

インターネットの勃興と価格の低下:Eコマースの世界のインフレ測定

というNBER論文をオバマ政権でCEA委員長を務めたオースタン・グールズビーらが書いている(ungated版)。原題は「Internet Rising, Prices Falling: Measuring Inflation in a World of E-Commerce」で、著者はAustan D. Goolsbee(シカゴ大)、Peter J. Kle…

国家および非国家の主体への信頼:パキスタンでの紛争解決における実証結果

というNBER論文をアセモグル=ロビンソンらが書いている(ungated版)。原題は「Trust in State and Non-State Actors: Evidence from Dispute Resolution in Pakistan」で、著者はDaron Acemoglu(MIT)、Ali Cheema(ラホール経営科学大学)、Asim I. Khwa…

不確実性とハイパーインフレ:第一次大戦後の欧州のインフレ動学

というNBER論文が上がっている(ungated版)。原題は「Uncertainty and Hyperinflation: European Inflation Dynamics after World War I」で、著者はJose A. Lopez(SF連銀)、Kris James Mitchener(サンタクララ大)。 以下はその要旨。 Fiscal deficits,…

ビッグデータによる経済予測:スパース性の幻想

表題のNY連銀ブログ(原題は「Economic Predictions with Big Data: The Illusion of Sparsity」)で、同じタイトルの研究論文の内容を紹介している。著者はDomenico Giannone(NY連銀)、Michele Lenza(ECB)、Giorgio Primiceri(ノースウエスタン大)。 …

買い手独占、名目硬直性、および賃金の謎

クルーグマンが、なぜ賃金が上昇していないのか、というテーマについて表題のエントリ(原題は「Monopsony, Rigidity, and the Wage Puzzle (Wonkish)」)で書いている。その内容は概ね以下の3点にまとめられる。 米経済は完全雇用に近い その点については、…

頑健に最適な金融政策としての住宅価格への反循環的対応

というNBER論文をマイケル・ウッドフォードが上げている。原題は「Leaning Against Housing Prices as Robustly Optimal Monetary Policy」で、著者はKlaus Adam(マンハイム大)、Michael Woodford(コロンビア大)。 以下はその要旨。 We analytically cha…

ニューケインジアンモデルに解の唯一性の問題はあるか?

というNBER論文が上がっている。原題は「Does the New Keynesian Model Have a Uniqueness Problem?」で、著者はLawrence Christiano(ノースウエスタン大)、Martin S. Eichenbaum(同)、Benjamin K. Johannsen(FRB)。ungated版(およびプレゼン資料*1)…

ネオリベラリズムの指針となるイデオロギーとは?

一昨日、昨日に続きクリス・ディローねた。 少し前にネオリベラリズムを「捉えどころがなく意味が移ろう概念であり、明確な擁護団体がいない(a slippery, shifting concept, with no explicit lobby of defenders)」と評したロドリックの論説を紹介したが…

CAPMが経済学について教えてくれること

クリス・ディローが、最近の経済学論議(cf. ここ)に対する一つの切り口として、ファイナンス理論におけるCAPMを引き合いに出している。ディローに言わせれば、効率的市場仮説が実証的な観察結果(株価はランダムに動くように見える、市場に勝てる人はなか…

ジョブギャランティはケインズ主義的か、マルクス主義的か?

クリス・ディローが、ジョブギャランティ計画の長所として以下を挙げている。 仕事を提供することにより、失業に伴う様々な苦難を軽減させる。 不況期に総需要を押し上げ、好況期に縮小するという、ケインズ主義的な自動安定化装置としての機能がある。 安定…

インフレ加速仮説の死

5/11付けエントリでクルーグマンが以下の2枚のグラフを示している。 クルーグマンによれば、これらの図は自然失業率仮説がもはや成立しなくなったことを意味するという。曰く: Underlying the natural rate hypothesis is “accelerationism”: the idea that…

ジョブギャランティ計画が上手く行かない理由

ジョブギャランティを巡る議論がこのところ米国で活発化している。サンダース議員夫人が設立したサンダース研究所のブログで「Report: A Path to Full Employment」と題したブログエントリが4月に上げられた*1ほか、サンダース自身が近々ジョブギャランティ…

ダグラス・C・ノース:取引コスト、財産権、および経済的帰結

というNBER論文が上がっている。原題は「Douglass C. North: Transaction Costs, Property Rights, and Economic Outcomes」で、著者はGary D. Libecap(UCサンタバーバラ)。 以下はその要旨。 Douglass North asked why some societies historically and c…

20世紀における労働組合と格差:サーベイデータからの新たな証拠

というNBER論文が上がっている(ungated版)。原題は「Unions and Inequality Over the Twentieth Century: New Evidence from Survey Data」で、著者はHenry Farber(プリンストン大)、Daniel Herbst(同)、Ilyana Kuziemko(同)、Suresh Naidu(コロン…

識別仮定が完全に信じられない時の構造ベクトル自己回帰における推定:経済変動における金融政策の役割の再評価

というNBER論文をジェームズ・ハミルトンらが書いている(ungated版)。原題は「Inference in Structural Vector Autoregressions When the Identifying Assumptions are Not Fully Believed: Re-evaluating the Role of Monetary Policy in Economic Fluctu…

貨幣は債務ではなく株式

と主張するエントリが世銀ブログに上がっている。著者は世銀のアドバイザーを務めるBiagio Bossoneとパレルモ大教授のMassimo Costaで、内容的には小生が以前ここで紹介した議論を連想させなくもない。 以下はエントリの後半からの引用。 Money accounted as…

経済学者からトランプ大統領への2つの公開書簡

多くの経済学者が署名した5/3付けと5/11付けの2つの公開書簡にマンキューがリンクしている。 以下は5/11付けの書簡。 We enthusiastically endorse President Trump's economic agenda to create jobs and restore economic growth. We believe the Presiden…

いかにして経済学者はここまで臆病になったか

というThe Chronicle of Higher Education論説をEric PosnerとGlen Weylが書いている(H/T Mostly Economics)。原題は「How Economists Became So Timid」で、副題は「The field used to be visionary. Now it’s just dull.(この分野はかつてはビジョンを…

マークアップのパラドックス

9日エントリではロバート・ホールによるマークアップ(限界費用に対する価格の上乗せ幅)の分析を紹介したが、Dietrich Vollrathが、David Rezza Baqaee(LSE)とEmmanuel Farhi(ハーバード大)が提示したマークアップのパラドックスを紹介している*1。 ホ…

技術革新が加速しているように見える時になぜ経済成長率が減速したのか?

というNBER論文をロバート・ゴードンが上げている(原題は「Why Has Economic Growth Slowed When Innovation Appears to be Accelerating?」)。以下はその要旨。 Measured between quarters with identical unemployment rates, U. S. economic growth slo…

金融におけるビッグデータと大企業の成長

というNBER論文が上がっている(ungated版)。原題は「Big Data in Finance and the Growth of Large Firms」で、著者はJuliane Begenau(スタンフォード大)、Maryam Farboodi(プリンストン大)、Laura Veldkamp(NYU)。 以下はその要旨。 One of the mos…

限界費用に対する価格の上乗せ幅ならびに米経済におけるメガ企業の役割に関する新たな証拠

というNBER論文(原題は「New Evidence on the Markup of Prices over Marginal Costs and the Role of Mega-Firms in the US Economy」)をロバート・ホールが書いている。以下はその要旨。 The markup of price over marginal cost reveals market power. …

金融不確実性乗数

というNBER論文を不確実性指数で有名なNicholas Bloom(cf. ここ)らが書いている(AEA版)。原題は「The Finance Uncertainty Multiplier」で、著者はIván Alfaro(ノルウェー経営大学)、Nicholas Bloom(スタンフォード大)、Xiaoji Lin(オハイオ州立大…

ハートランドに職を:21世紀米国における地域ベースの政策

というNBER論文をサマーズとエドワード・グレイザーらが書いている(ungated版にリンクしたブルッキングス研究所のページ)。原題は「Jobs for the Heartland: Place-Based Policies in 21st Century America」で、著者はBenjamin Austin、Edward Glaeser、L…

マルクスの影響力を甦らせたもの

昨日(5月5日)の生誕200周年を受けて、マルクスに関する論考が数多く現れている。ピーター・シンガーは、Project Syndicate論説で、マルクス思想の本質的な欠陥を以下のように指摘している。 Marx’s reputation was severely damaged by the atrocities com…

バルカンの日本と呼ばれた国

Victor Petrovという欧州大学院のポスドクの学生が、ブルガリアにおけるハイテクとSFの発展をテーマとしたaeon記事「Communist robot dreams」を書いている(H/T Mostly Economics)。同国で電機産業が発展した経緯を説明した箇所では、以下のように日本との…

経済学者がビッグデータに熱心でない理由

BOEチーフエコノミストのアンドリュー・ホールデンが、ビッグデータをテーマに講演している(H/T Mostly Economics)。 その中で、ビッグデータに対する経済学者とデータサイエンティストの態度の違いについて以下のように述べている。 The first thing to s…

応用ミクロの現状と課題

30日エントリで紹介したノアピニオン氏のブルームバーグ論説は、英国の新聞や雑誌で展開された経済学批判を槍玉に挙げていたが、最後に、エコノミスト誌で今度始まった経済学批判はどうなることやら、と書いていた。そのエコノミスト誌の応用ミクロ経済学批…

特性こそ共分散である:リスクとリターンの統一モデル

というNBER論文が上がっている(ungated版)。原題は「Characteristics Are Covariances: A Unified Model of Risk and Return」で、著者はBryan Kelly(イェール大)、Seth Pruitt(アリゾナ州立大)、Yinan Su(シカゴ大)。 以下はその要旨。 We propose …