ニューケインジアンモデルに解の唯一性の問題はあるか?

というNBER論文が上がっている。原題は「Does the New Keynesian Model Have a Uniqueness Problem?」で、著者はLawrence Christiano(ノースウエスタン大)、Martin S. Eichenbaum(同)、Benjamin K. Johannsen(FRB)。ungated版(およびプレゼン資料*1)は一昨年キヤノングローバル戦略研究所が開いたセミナー「CIGS Conference on Macroeconomic Theory and Policy 2016」のページに掲載されているが、それによるとこの論文は、以前ここで紹介した論文を大きく改定した版(a heavily revised version)との由。
以下はその要旨。

This paper addresses whether non-uniqueness of equilibrium is a substantive problem for the analysis of fiscal policy in New-Keynesian (NK) models at the zero lower bound (ZLB). There would be a substantive problem if there were no compelling way to select among different equilibria that give different answers to critical policy questions. We argue that learnability provides such a criterion. We study a fully non-linear NK model with Calvo pricing frictions. Our main finding is that the model we analyze has a unique E-stable rational expectations equilibrium at the ZLB. That equilibrium is also stable-under-learning and inherits all of the key properties of linearized NK models for fiscal policy.
(拙訳)
本稿は、ゼロ金利下限でのニューケインジアンモデルの財政政策の分析において、均衡が唯一でないことが大きな問題になるかどうか、について分析した。重大な政策問題に対しそれぞれ異なる回答を与える相異なる均衡から取捨選択を行う説得力のある方法が存在しなければ、大きな問題が存在することになる。我々は、学習可能性がそうした選択基準を提供する、と論じる。我々は、カルボ価格付け摩擦を備えた完全に非線形なニューケインジアンモデルを調べた。我々の得た主要な結果は、我々が分析したモデルには、ゼロ金利下限で唯一の期待安定的な合理的期待均衡が存在する、ということである。その均衡は学習安定的でもあり、財政政策の線形化されたニューケインジアンモデルの主要な特性すべてを引き継いでいる。

*1:ちなみにこのプレゼン資料では、論文には書かれていないトピックとして、新フィッシャー派の見解を学習理論の観点から否定している(cf. 関連研究)。