30日エントリで紹介したノアピニオン氏のブルームバーグ論説は、英国の新聞や雑誌で展開された経済学批判を槍玉に挙げていたが、最後に、エコノミスト誌で今度始まった経済学批判はどうなることやら、と書いていた。そのエコノミスト誌の応用ミクロ経済学批判に反論する形で、マシュー・カーンが応用ミクロの将来の展望が明るい理由を挙げている。
- 応用ミクロの研究者は、かつてないほどのデータと計算能力にアクセスでき、精緻な計量経済手法もかつてないほど容易に利用できる。改良されたStataのパッケージソフトでは、過去の研究者が課した統計的仮定の多くを緩和できる。そうした「頑健な」推定により、真実に近付くことができる。
- 「自然実験」や不連続や明示的なランダム化により、「原因変数」(X)の変動はかつてないほど豊富にある。
- グーグルの到来、および欧州ならびに非西側諸国での経済学の勃興により、現在の応用ミクロ研究者の界隈では、五大誌、および、NBERとIZAとCEPRのワーキングペーパーにどのような発見が掲載されるかを「リアルタイム」に知ることができる。今や世界中に非常に多くの応用ミクロ経済学者がいるため、競争によりイノベーションと進歩が促される。
- 再現研究は増加しており、この分野の「科学」としての進歩の重要な一部となっている。
- アマゾンのような先進企業は定量分析の訓練を大いに重視している。学部生はそのことを知っており、そうした方向のキャリアが追求できるように、数学やコンピューターのプログラミングや経済学や統計学の訓練に投資している。そうした若い人たちの中には経済学の博士課程に進む者も出てくるだろう。それらの才能の流入により、応用ミクロは力強く発展する。
- ラジ・チェティ(Raj Chetty)らの学者の尽力により、IRSの税データなど行政データを利用することの威力が今や世界中でますます明らかになっている。経済発展をもたらす方法を「自分が知らない、ということを知っている」政府官僚がJ-PAL*1などの経済学者との連携を深め、実験と学習で協力することを期待する。これはミクロ経済学者としてのハイエクの最善の形態である。
その一方でカーンは、以下の懸念も表明している。