2023-03-01から1ヶ月間の記事一覧

クルーグマン銀行危機を語る

前回エントリで紹介したサマーズの銀行危機についてのインタビューは、3月21-22日に開催されたFOMCの前週に実施されたもののようで、25ベーシスポイントの引き上げを言外に言い当ててたが、FOMC直前の3/20の連ツイでクルーグマンは、FRBは何もするな、と主張…

サマーズ銀行危機を語る

サマーズがHarvard Gazetteのインタビューに答える形で今回の銀行危機について語っている(H/T サマーズがリツイートしたハーバードBelfer Centerのツイート)。以下はその概要。 事故には常に多くの原因がある。今回のことは、以下のいずれかが行われていた…

2023年の金融引き締めと米国の銀行の脆弱性:時価損失と保険のない預金者の取り付け?

というNBER論文が上がっている(ungated(SSRN)版;H/T Mostly Economics、一上さんツイート)。原題は「Monetary Tightening and U.S. Bank Fragility in 2023: Mark-to-Market Losses and Uninsured Depositor Runs?」で、著者はErica Xuewei Jiang(南カリ…

政府の支出乗数はショックの符号に依存するか?

というNBER論文が上がっている(ungated版へのリンクがある著者の一人のページ)。原題は「Do Government Spending Multipliers Depend on the Sign of the Shock?」で、著者はNadav Ben Zeev(ネゲヴ・ベン・グリオン大学)、Valerie A. Ramey(UCサンディ…

予算のトリレンマ

マンキューのブログエントリからもう一丁。 A wise economist of the center left recently suggested to me that the Biden administration faces a trilemma: They would like to (1) increase spending on programs they consider important, (2) not rai…

マンキューの見たシリコンバレー銀破綻

マンキューがブログでシリコンバレー銀破綻について5つのポイントを指摘している。 シリコンバレー銀の破綻は、我々が史上最大の債券の下げを経験したことと密接に関連しているように思われる。即ち、同銀は金利に無分別な賭けを行って、非常に不運だった。 …

サマーズ対ブランシャール:今後の金利を巡る議論・その4

サマーズとブランシャールの対談からの議論の引用のラスト。最後は、司会のポーゼンからの求めに応じて、r-gと財政政策について論じている。【ブランシャール】 プラスのr-gは、動学がかなり思わしくなくなったことを意味している。財政政策発動の余地は小さ…

サマーズ対ブランシャール:今後の金利を巡る議論・その3

引き続きサマーズとブランシャールの対談からの議論の引用。一連の会話の中で両者は折に触れて基本的に意見が一致していることを強調しているが、それとは裏腹に、最初のエントリで触れたリスクプレミアムと金利を巡る議論で両者の考え方の違いが露わになっ…

サマーズ対ブランシャール:今後の金利を巡る議論・その2

前回エントリの続きとして、サマーズとブランシャールの対談から、グローバル化ないしその逆転現象の中立金利への影響に関する議論を紹介してみる。 サマーズ:これまで米国に焦点を当てた話をしてきたが、それによって視聴者に少し誤解を与えたかもしれない…

サマーズ対ブランシャール:今後の金利を巡る議論

ピーターソン国際経済研究所で行われたブランシャールとサマーズの今後の金利動向に関する対談の前半を、トランスクリプトを基にざっくりとまとめてみる。 対談ではまずブランシャールが以下の8項目の論点を挙げて議論の口火を切っている。 コロナ禍以前の35…

3つの一人当たりGDP・補足

前回エントリの最後で、「GDP指標の各国比較の際に使われる購買力平価の動向が、実際の対ドルレートの動向と国によってかなり異同があるというのは、注意を要する」と書いたが、その購買力平価(PPP)と、WEOデータベースに収録されているCPIの各国と米国の…

3つの一人当たりGDP

少し前に一人当たりGDPの国別ランキングに関するツイートが話題になったので、IMFのWEOデータベースのサイトからデータを落としてグラフを描いてみた。ここではアジアは日韓台、欧州は独仏伊、およびアングロサクソンの米英豪を対象とし、期間はデータの取れ…

中央銀行にとっては少々益益弁ず

3/5エントリに、そこで取り上げた白川論文が掲載されたIMF季刊誌の同じ号の表題のラジャン論文(原題は「For Central Banks, Less Is More」)をどう思うか、というコメントを頂いた。同論文の主旨を乱暴にまとめると、今現在問題になっている高インフレレジ…

仕事、会社、空間を横断して見た在宅勤務

というNBER論文が上がっている。原題は「Remote Work across Jobs, Companies, and Space」で、著者はStephen Hansen(ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン)、Peter John Lambert(LSE)、Nicholas Bloom(スタンフォード大)、Steven J. Davis(シカゴ大)…

緩和的な金融政策と金融の不安定性

というNBER論文が上がっている。原題は「Loose Monetary Policy and Financial Instability」で、著者はMaximilian Grimm(ボン大)、Òscar Jordà(SF連銀)、Moritz Schularick(ボン大)、Alan M. Taylor(UCデービス)。 以下はその要旨。 Do periods of …

米国はインフラ費用問題を抱えているか? 州間高速道路網についての実証結果

というNBER論文が上がっている(昨年12月時点のWP)。原題は「Does the US have an Infrastructure Cost Problem? Evidence from the Interstate Highway System」で、著者はMatthew Turner(ブラウン大)、Neil Mehrotra(ミネアポリス連銀)、Juan Pablo U…

米国におけるコロナ後遺症

というNBER論文が上がっている。原題は「Long Covid in the United States」で、著者はDavid G. Blanchflower(ダートマス大)、Alex Bryson(ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン)。 以下はその要旨。 Although yet to be clearly identified as a clinica…

欧州の生産性動学再訪:稼働率調整済みTFP成長の新指標

というNBER論文が上がっている(ungated版へのリンクがある著者の一人のページ)。原題は「Revisiting Productivity Dynamics in Europe: A New Measure of Utilization-Adjusted TFP Growth」で、著者はDiego A. Comin(ダートマス大)、Javier Quintana(…

Shirakawa(2023)対白川(2002)

IMFの白川論文が話題になったが、小生から見ておかしいと思われる点をまとめておく。 日本の2000-2012年の生産年齢人口当たりの成長率がG7の中で最も高いことをゼロ金利制約の無効性の根拠としているが、12年前の拙エントリで示したように、その期間の生産年…

米国、経済ニュース、および世界金融循環

というFRB論文をMostly Economicsが紹介している。原題は「The US, Economic News, and the Global Financial Cycle」で、著者はChristoph E. Boehm(テキサス大学オースティン校)、T. Niklas Kroner(FRB)。 以下はその要旨。 We provide evidence for a …

世界各国の加重中央値インフレ:コアインフレの指標

というローレンス・ボールらのIMF論文をMostly Economicsが紹介している。原題は「Weighted Median Inflation Around the World: A Measure of Core Inflation」で、著者はLaurence M. Ball(ジョンズ・ホプキンス大)、Carlos Carvalho(リオデジャネイロ・…

商品価格、ドル、およびスタグフレーションリスク

というBIS論文をMostly Economicsが紹介している。原題は「Commodity prices, the dollar and stagflation risk」で、著者は同行の Boris Hofmann、Taejin Park、Albert Pierres Tejada。 以下はその要旨。 Fluctuations in commodity prices and the US dol…

景気循環の形:フリードマンのプラッキング理論の国際比較分析

というBIS論文をMostly Economicsが紹介している。原題は「The shape of business cycles: a cross-country analysis of Friedman's plucking theory」で、著者は同行のEmanuel Kohlscheen、Richhild Moessner、Daniel Rees。 以下はその要旨。 We test the …