今日は軽めのネタを2つ。
1.不平等社会日本
- 作者: 佐藤俊樹
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2000/06/01
- メディア: 新書
- 購入: 1人 クリック: 54回
- この商品を含むブログ (107件) を見る
ちきりん氏がこの本の書評を書いていたのを見て思い出したが、10年前に友人に薦められて読んだものの、残念ながらあまり感心しなかった、というメールを書いたことがあった。以下にそのメールを再録してみる。
そういや前に紹介してくれた不平等社会日本という本を読みましたが、正直言ってかなり牽強付会(要するにこじつけ)という気がいたしました。今月号の中央公論でも著者の佐藤氏と、別の東大教授が論争していましたが、ホワイトカラーの課長以上が日本のエリートだなんて彼は本気で信じているのかね(この本はその前提にすべて立脚している)。
最後まで読んで、この本に書かれている論理にはかなり彼の生い立ちが影響していることがわかりました。しかし社会科学を行う上では、価値判断については禁欲的でなくてはならないとかのマックス・ウエーバーが唱えたと15年前に習った記憶がありますが、この本は思いっきりその戒めを破っているような気がする。
[メール日付=2000/10/31]
なお、試しに「不平等社会日本」でぐぐってみると、中澤港氏の2000/11/7書評が検索の上位にヒットしたが、そこには
長い後書きは,著者に本書を書かせた怨念めいた動機を感じさせるが,著者が,自身の感性に一点の疑いももっていないらしい点に傲慢さが見える。池澤夏樹や川端裕人の自己を客観視する視点とは対照的だ。結局,最後まで我田引水と牽強付会だらけの本だった(から,たぶん確信犯なのだろう)。一般読者の方は,くれぐれも鵜呑みにしないようにご注意されたい。
http://phi.med.gunma-u.ac.jp/bookreview/unequal-soc-japan.html
と書かれている。牽強付会という感想や執筆姿勢への疑問を抱いたのは小生だけでは無かったようだ。
また、大竹文雄氏の否定的な評価も検索の上位に引っ掛かってくるが、そこで触れられている盛山和夫氏の反論についてはsheepman氏や慶応の学生さんのレポートの解説が詳しい。
2.イモリ
少し前に、kmori58氏が以下のようにつぶやかれている。
これはクルーグマンの8/29ブログエントリを指している。最近のクルーグマンは、NYTコラムを書く前日に、そのコラムのテーマに引っ掛けた音楽のYouTube動画をブログでリンクするのが通例となっているが、この時は適切な音楽を見つけられなかったので(「Sorry, I couldn’t find any appropriate music」と断っている)、モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイルの動画にリンクしている。
翌日のNYTコラムのタイトルは「It’s Witch-Hunt Season」だが*1、ブログでリンクしたモンティ・パイソン動画中の関係する台詞は以下の通り。
Sir Bedevere: What makes you think she's a witch?
Monti Paison ando hôrii gurairu (1975) - Quotes - IMDb
Peasant 3: Well, she turned me into a newt!
Sir Bedevere: A newt?
Peasant 3: [meekly after a long pause] ... I got better.
Crowd: [shouts] Burn her anyway!(拙訳)
ベディヴィア卿*2:なぜ彼女が魔女だと思うのだ?
農民3:だんな、彼女はあっしをイモリに変えちまったんでさあ!
ベディヴィア卿:イモリに?
農民3:[長い間の後に弱々しく]…今は良くなりましたがね。
群集:[叫ぶ]とにかく彼女を火あぶりにしちまえ!
つまり、「Obama Turned Me Into A Newt」というエントリタイトルは、根拠が薄弱でもとにかくオバマを非難する勢力を、上の魔女狩りの農民に準えているわけだ。さらにクルーグマンは、イモリ(newt)をニュート・ギングリッチの名前に引っ掛けて、エントリ本文では「The question is, was it a newt or a Newt? Maybe both.」とも書いている*3。