昨日紹介したWillem Buiterのブログの最近のエントリを見ていたら、1週間前に一騒動あったようだ。2/17 1:45AMのエントリで、Buiterはいったん断筆宣言をしている。理由は、ブログのホスト主であるFTが2/6に導入したコメントのフィルタリング制度のため。これにより、BuiterはFT側がフィルタリングした後のコメントしか見られなくなったので、それに抗議してブログのポストを止めると書いている。FTが個人攻撃に関する訴訟を恐れるのは分かるし、自分がFTにブログの場を移したことによりある程度制約を受けることになるのは分かるが、自分としては good, bad and uglyすべてのコメント*1を見たいので、自分の得られる情報について原状が回復されるまでブログ投稿を中断する、との由。
このエントリにはBuiterの動きを称賛するコメントがひとしきり続いたが、FT側の担当者が9:23AMに釈明のコメントを入れている(よほど慌てたのか、4分後の9:27AMに同じコメントを二重投稿している)。曰く、コメントのフィルタリングの方針を変えたわけではなく、担当者がすべてのブログのコメントを一括してフィルタリングするシステムを導入したため、ブロガー側がすべてのコメントを閲覧するためにはそちらのシステムにもログインすることが必要になった、とのこと。Buiter教授には引き続きすべてのコメントに関するコントロールを続けて欲しい、とも書いている。
これを受け、Buiterは、「有限時間内の正の確率での投稿」と題した同日の12:35PMのエントリで、ブログを続けることを表明した。ただ、「影響を受ける周辺に意見を聞くことも相談することもなく一方的に中央集権化・標準化した場合の技術的退化のささやかな例」とFT側を皮肉ることは忘れていない。
この一件は、企業サイトでブログを行なう場合のホスト主とブロガーの緊張関係を示す好例だろう。
そういえば以前、アトランタ連銀におけるmacroblogの存在について驚きを込めて書いたが(本石町日記さんも同様のことを書いている)、Econbrowserのジェームズ・ハミルトンによると、このブログはそもそもDave Altigがアトランタ連銀の職を引き受ける前にやっていたブログを、アトランタ連銀がホスト主として引き受けたものとのことだ(昨年の8/12エントリにその経緯に関するAltig本人の説明がある)。ハミルトンは、人々はこのmacroblogをFRBの意見の代理人に過ぎないと見なすかもしれないが、FRBは皆が思っているほど一枚岩の組織ではなく、多くの優秀で独立心に富んだ研究者を抱えており、かつ、その意見もかならずしもバーナンキと一致しているとは限らず*2、傾聴の価値がある、と注釈している。
こうしたブログ(ないしブロガー)のホスト主からの独立性の問題は、今後もブログ界の課題として折に触れ出てくるのかもしれない(そういえば日本では少し前にこんな騒動があったな…)。