経済学者とブログ・続き

昨日紹介したNick Roweのエントリのコメント経由で知ったが、Willem Buiter氏も表題の件について書いていた。これも面白いので、昨日と同様にまとめてみる。

  • 私のブログをもっと簡潔にしろと言う人たちへ:このブログは私自身のために書いているのであって、読者のために書いているのではない。書くことによって、複雑な問題の理解を図るのが目的。
  • ブログという場で書くことにより、自分の殴り書きに対しコメントや批判を寄せてくれる人が現れるという余禄が生じる。ただし、豚どもの間に隠された真珠に到達するため、意味をなさない文章を掻き分けなくてはならないというコストも生じるが。
  • 読者を得ることによりささやかな虚栄心ないしエゴを満足させ、コンサルタント収入が上がるという副産物もあるかもしれないが、それらはいずれも書くことに比べれば二次的な話に過ぎない。私の場合、書くことによって初めて物事が把握できる。
  • 以前は自分のところで書いていたが、FTに招待されたので移動した。移動したのは、虚栄心ないしエゴをより満足させるためと、より広い読者層から知的なフィードバックを得るためだ。FTが私に興味を無くしたら、自分のところに戻るつもりだ。ブログに対する報酬は受け取っていない。
  • ということで、私のブログエントリがより簡潔になることはない。扱う問題が複雑ならば、私のエントリも複雑で長くなる。この点に関して読者に譲歩するつもりはない。なぜ譲歩する必要がある? それで読む気を無くす読者は、そもそも私が読んで欲しいと想定していた読者ではない。そういう人たちはナショナル・エンクワイアラーやビルドやニュース・オブ・ザ・ワールドといった大衆紙でも読んでいれば良い。
  • P.S. 私のことを傲慢だという人もいるが、なぜそう思うのかさっぱり分からない。

欧州の知識人らしい皮肉っぽい書き方ではあるが*1、読者のためではなくまずは自分のために書いている、というのはほとんどのブロガーに共通した心理では無いだろうか。


ただ、FTから報酬を受け取らず、知的なフィードバックを目的にしている、というくだりを読んで、およそ対照的な以下の文章を思い浮かべずにはいられなかった。

すっごいねえ。


ずうずうしいというか、抜け目ないというか。「反論、ご意見などがあれば、遠慮なくおっしゃってください」だって?一見すると丁寧めかしたメールなんだが、ここで言ってることは、要するに「ウチの社にタダ原稿ちょうだい」ってことでしょ?この出版不況の折り、出版社が生き延びて行くには、編集さんもこれくらい面の皮が厚くないといかんの ですね。見上げたド根性ではある。

http://homepage3.nifty.com/martialart/sikou.htm

いくら自分の本を批判した書籍の出版社に対するものとはいえ、文章の品格の無さもさることながら、論争の場を提供しようという申し出に銭ゲバぶりで応じるという姿勢にげんなりしてしまう。これが彼我のトップレベルと言われる大学に勤める大学教授の差か、という安易な結論には飛びつきたくはないが…。

*1:ただし米国市民権も持っているとの。出身はオランダらしい。