年度と暦年の違い

一昨日、本石町日記さんが以下の日経ったーさんのツイートをリツイートされた後、

以下のツイートをされた。


日銀見通しは15年度、OECD見通しは15年暦年の予測値なので、もちろんこの単純比較には問題がある。例えば、年度と暦年の見通しを共に出している日経センターの予測値は、以下のようになっている(消費税率を17年4月に10%に引き上げる場合)。

2015暦年 0.8%
2015年度 1.3%

2015暦年はOECDと同じで、2015年度は日銀より0.2%ポイント低いに過ぎない。同一予測機関の予測の数字でも、暦年と年度では成長率にこれだけ差が出るわけだ。


この差がどのように生じているかを見てみよう。日経センターは四半期ごとの伸び率の予測値も出しているので、それで14年10-12月期以降の実質GDPを伸ばすと以下のようになる*1

実質GDP 前期比
14/1-3 535034.4 1.6
4-6 525001.9 -1.9
7-9 522830.1 -0.4
10-12 526751.3 0.75
15/1-3 529911.8 0.6
4-6 530971.7 0.2
7-9 532564.6 0.3
10-12 533629.7 0.2
16/1-3 534697.0 0.2

この時、14年のGDPは527404.4、14年度のGDPは526123.8で、14年度のGDPの方が14年より0.24%低い。
一方、15年のGDPは531769.4、15年度のGDPは532965.7で、15年度のGDPの方が15年より0.22%高い。
つまり、15年度成長率と15年成長率を比較した場合、前者の方がそれぞれ0.2%強だけ分母が低く分子が高いため、成長率に0.5%ポイントの差が生じたわけだ。


序でにもう一社、ニッセイ基礎研究所の予測値についても同様の表を作ってみよう。

実質GDP 前期比
14/1-3 535034.4 1.6
4-6 525001.9 -1.9
7-9 522830.1 -0.4
10-12 527535.6 0.9
15/1-3 530700.8 0.6
4-6 531762.2 0.2
7-9 533889.2 0.4
10-12 535490.9 0.3
16/1-3 537097.4 0.3

上表から、日経センターについて行ったのと同様に、ニッセイ基礎研の15年と15年度の成長率の分子分母を比較すると次のようになる。
分母:14年のGDPは527600.5、14年度のGDPは526517.1で、14年度のGDPの方が14年より0.21%低い。
分子:15年のGDPは532960.8、15年度のGDPは534559.9で、15年度のGDPの方が15年より0.30%高い。


ニッセイ基礎研の15年度の成長率予測は1.5%で、日銀と同じである。暦年の予測値は発表していないが、上表から計算すると、15年は1.0%成長となり、OECDより0.2%ポイント高い。つまり、15年/年度の成長率予測については、日経センターがOECD、ニッセイ基礎研が日銀に近いと考えて良さそうだ。そうすると、日銀とOECDの成長率予測の差は概ね0.2%ポイントと考えられ、「15年度、日銀1.5%。OECD、その半分程度。」という表現はかなりミスリーディングであることが分かる。

*1:14年7-9月期以前は実質GDP、前期比ともに実績値。日経センターが公表している伸び率は小数点以下1桁で、14年10-12月期の前期比の予測値は0.8%だが、ここでは15年度=0.8%、15年=1.3%の成長率を再現するため、0.75%と置いた(単純に14年10-12月期を0.8%と置くと15年度=0.9%になってしまう)。