「Abenomics Is Working, Don't Stop Now」というピーターソン国際研究所の論説記事をジョセフ・ギャニオンと田代毅氏が書いている。
以下はその概要。
- 景気拡大が戦後最長になろうとしていて、女性の労働参加率と企業利益が過去最高、失業率は25年来の低さとなった日本には最早2%インフレは不要であり、現行の0と1%の間で手を打っても良いのではないか、という人も多い。しかし、次の不況が訪れた時に日銀が手を打てる余地を確保するためには、継続的な2%インフレは必要。
- 2%インフレが達成できなかったのは、金融と財政の政策がちぐはぐだったため。日銀が金融緩和を進めた一方で、景気循環調整済み財政赤字はIMFの推計では2012年のGDPの7.4%から2018年には3.6%に縮小すると見込まれる。初期の一時的な財政刺激策は2014年の消費税増税に打ち消された。
- ただ、全般的には上手く行っている。女性の労働参加で2013年以降の潜在成長率が年率0.1ポイント上昇したにも拘らず、生産ギャップは2012年の-3.7%から2018年の-0.3%に縮小した。女性と長期失業者がさらに職を得る余地はある。
- 金融政策は過去5年に多くを成し遂げたが、インフレを上げるためには日銀は最大限の緩和を続ける必要がある。財政が引き締めに転じるのは、インフレが継続的に目標を達成するようになってから、という条件付きにすべき。最近のIMFの経済学者の研究では、日本の長期の財政問題を解決するどんな戦略においても、成長とインフレの押し上げが肝要、という結果が示されている。
- もし今日銀が金利を引き上げたら、インフレはゼロ近傍に留まるだろう。1〜2%まで引き上げれば、景気後退を招くだろう。たとえ1〜2%の金利が安定成長にそぐうものだとしても、経済にマイナスのショックが発生すれば日銀に操作の余地は無い。2%インフレ目標を達成するために金利をゼロ近くに留め、長期的な潜在成長率を上回る成長を数年間保てば、多くの職が創出され、最終的に名目金利を3〜4%に引き上げる条件が整うだろう。そうなれば将来の不況に対処する余地が生まれる。
- 2%インフレ達成まで緩和政策を継続すべきもう一つの理由は、日銀の傷付いた信認を取り戻すため。目標を達成できれば信認を得るが、目標を達成できなければ信認を失う。信認を得たインフレ目標を持つことには、将来の不況とデフレを防ぐ上で大いなる価値がある。