クライメートゲート事件と筑波大事件の奇妙な符合

最近世間を騒がせているクライメートゲート事件に関する記事を読んでいて、拙ブログで少し前に取り上げた筑波大プラズマ研究改竄事件となんか似ているな、と思ったので、以下に気が付いた共通点を思いつくままに挙げてみる。なお、あくまでも素人による感想レベルの比較であることはお断りしておく。また、だから何なんだ、と問い詰められても困るが、巨大科学のスキャンダルにおける構造をアネクドート的に探る手掛かりくらいにはなるかもしれない、とは考えている。

1.ノイズの大きなデータのグラフから変曲点を見い出している

クライメートゲート事件ホッケースティック曲線

…グラフの大部分の期間を占める青い線は、木の年輪、サンゴ、氷床などに刻まれた間接的なデータから復元した過去の気温の変動、最近200年程度の赤い線は温度計で測られた気温の変動です。青い線と赤い線をつなぐと、何百年間もほとんど変動がなかった気温が近年のみ急上昇しているように見えます。この形がホッケーのスティックに似ていることから、俗にこのグラフは「ホッケースティック曲線」とよばれます。

 実際には、過去のデータには大きな誤差幅があることが灰色で示されているのですが、この青と赤の「ホッケースティック」の線のみが世の中に注目されてしまったようです。これは、科学コミュニケーションの観点からみて大きな不幸だったといえるかもしれません。誤差幅のことを無視して最近の気温上昇が異常なものとしてしばしば強調され、その一方で、過去1000年の気温はもっと大きく変動していたはずだと考える古気候学者などが一斉にこのグラフに不審の眼を向けたようでした。

テクノロジー : 日経電子版
●筑波大事件:プラズマ電位の導出

 長教授らはこれらの生データを解析した結果、図5の緑の様に理想的な振る舞いに近い折れ線が得られ、そこから当該距離におけるプラズマ電位の値が0.125kV(誤差±0.01kV)であるとの結果を得たとしている。
 しかし、図4のように、信号に意味のない乱雑な成分(ノイズ)が大きく含まれている生データから図5のような解析結果を導く方法は、科学的根拠に基づくものとは考えられない。

http://www.tsukuba.ac.jp/public/press/080306press_2.pdf
●疑惑に対する説明

他の研究も重ねると、過去1000年の気温は、「ホッケースティック」のみで示されていた場合に比べて、より変動が大きかった可能性があることがわかります。特に、古気候学者などがその存在を強調する中世の温暖期(10世紀ごろからの気温の高い時期)や小氷期(14世紀ごろからの気温の低い時期)が比較的明瞭に表れています。しかし、それらを考慮した上でも、IPCC第4次評価報告書は、「20世紀後半の北半球の平均気温は、過去500年間の内のどの50年間よりも高かった可能性が非常に高く、少なくとも過去1300年間の内で最も高温であった可能性が高い」と結論づけています。

テクノロジー : 日経電子版
  • 筑波大事件

 解法や別解は多様であっても、そこに恣意性なるものは一切ない。
 さらに、本論文に示したとおり、この統計解析に基づく、平均点の取り方の個数により、最終的に導かれる電位の値は、あらゆる実験データが常に持っている解析誤差内で若干変わりうる程度であり、なんら論文の結論に影響を与えない、極めて小さな誤差の範囲内に収まることが本論文においても示されているし、このことは世界の専門家も広く認めているところである。

http://www.cho-teruji.org//ScientificExplanations.pdf

2.データのオフセット操作の疑い

クライメートゲート事件:「トリック」

流出したプログラムから彼らがどんな"トリック"を使ったのか知ることが出来ます。
 yrloc=[1400,findgen(19)*5.+1904]
 valadj=[0.,0.,0.,0.,0.,-0.1,-0.25,-0.3,0.,-0.1,0.3,0.8,1.2,1.7,2.5,2.6,2.6,2.6,2.6,2.6]*0.75
これはCRUの副所長(Keith Briffa教授)が20世紀の気温をグラフ化する際に使ったスクリプトの核心部分。 1行目で1904〜94年を5年ずつに区切り、各区間の気温(実測値)に2行目の数字を加算しています。即ち1904〜24年は加算なし、1929〜49年は(温暖期なので)温度を引いて低く見せ、その後は徐々に気温を底上げし1979年以降は1.95度(2.6×0.75)も加算しています。

科学史上最悪のスキャンダル?! “Climategate” | Chem-Station (ケムステ)
●筑波大事件:フーリエ解析

 さらに、(a)から(h)すべてのグラフを作成する際、「オフセット」と呼ばれる操作がなされている。これは、グラフの縦軸の0点(原点)の値をデータごとに異なる分量だけ上下に移動する行為であるが、具体的にどのようにして「オフセット」の分量を決めたのかについて、長教授から納得できる回答はなく、「オフセット」が科学的根拠に基づく解析手続きであるとは考えられない。

http://www.tsukuba.ac.jp/public/press/080306press_2.pdf
●疑惑に対する説明

詳細な検討に興味のある方はこちらをどうぞ:
http://www.jgc.org/blog/2009/11/very-artificial-correction-flap-looks.html

今のところ、上のページの素晴らしい結論を疑う理由はないでしょう。 ある方法で予測される結果と現実の気温がずれてきていて、「どれだけの補正が必要になるのか」とりあえず最初の一歩として辻褄が合うような数字を探してみた、その結果があの数字。(研究が進んだ後のバージョンでは単なる定数ではなくなっている!) そして、このコードが使われた論文は、(私の超訳によると)「以前はこの方法でうまく合っていたんだけど、最近のデータではどんどん補正に必要な値が大きくなっていくので、その原因を調べなくっちゃ!」というものだったということ。 つまり、あの「補正」は論文の結果を歪めるものではなくて、研究の対象だったのですよ。

もう一度書いておきます。 「20世紀の気温をグラフ化する際に使ったスクリプト」なんかじゃないです。

kikulog
  • 筑波大事件

 なお、高速フーリエ変換FFT)による乱流等の解析における結果は、一意的には定まらず、必ず不定性が生じる。このことは、数学的に厳密に証明されており、この不定性(誤差の範囲ないし大きさ)をできる限り小さくするさまざまな考え方や手法がある。そして、この点につき定説がない現時点においては、プラズマ乱流の測定結果(生データ)を1つ1つ精査・熟慮した上で解析しても、なお定性的な補強データとしてしか、高速フーリエ変換FFT)による解析結果を用いることができないことは、周知の事実である。
 それゆえ、この図3につき 「オフセットを差し引く操作は論文に示されたデータに対して定量的に極めて重要である」とする研究公正委員会調査委員会調査結果は、既に検討の導入部において誤っている。対象論文は、オフセットを差し引く操作がデータに与える影響を当然の前提としており、そのような影響が生じることは対象論文の当該分野における専門性を有する読者にとってもまた当然の前提なのである。

http://www.cho-teruji.org//ScientificExplanations.pdf

3.メールが重要な証拠となっている

4.データが消失している

調査しようにもCRUの原データは消去されてしまった模様です。

科学史上最悪のスキャンダル?! “Climategate” | Chem-Station (ケムステ)
  • 筑波大事件

大学は調査の段階で、もとの生データから同じ図を再現するよう求めた。ところが、再現に必要な解析データの一部が見つからない。プラズマセンターでは、共用のコンピューターにデータを保存。解析担当者がバックアップのディスクを持つのが原則だったと言う。
厳重に管理されていたはずの、この2つのデータが不可解なことに、両方とも消えていた。

http://www.cho-teruji.org/