昨日のエントリでは、齋藤誠氏のHPの論説を批判的に取り上げた。そこでは主に、経済学者の役割を棚に上げていたずらに世間に説教したがる氏の姿勢を批判したが、それとは別に、もう一つ、ああこの人もそう見ているのか、と思わされた文章があった。
さまざまな状況証拠から見て,2002年前後の日米の超金融緩和政策が今般の金融危機をここまで深刻にした現況の1つだと考えて間違いない。
http://www.econ.hit-u.ac.jp/~makoto/2008zakkan.htm
このような認識は、山口広秀氏が日銀副総裁候補として国会に呼ばれた時に表明して話題になった。
山口広秀日銀副総裁候補(現・日銀理事)は21日午後、参院議院運営委員会における所信聴取後の質疑応答で、今回の金融危機の背景として、日銀の緩和政策が円キャリートレードのようなものを生み出し、危機の直前に存在していたグローバルな過剰流動性に影響与えた可能性がある、との認識を示した。
http://jp.reuters.com/article/domesticFunds/idJPnTK020079020081021
これについての小生の考え方を、以前ここの注に書いたが、イエス・キリストじゃあるまいし、そこまで世の中の問題を自分の罪として背負い込まなくても良いだろう、というのが率直な感想である。個人的にはこうした考え方を、「経済自虐史観」と呼んでいる。
面白いのは、いわゆる歴史問題に関しては自虐史観を厳しく批判するのに、この「経済自虐史観」には諸手を挙げて賛成し、それに基づいて日本国内のリフレ派の主張を問責する人もいることである。
キャリー取引の原因は、もちろん日銀のゼロ金利政策である。低金利・円安は輸出産業への補助金となって一時的な景気回復をもたらしたが、それが回り回ってアメリカの金融危機に日本経済が直撃される原因になったのだから、自業自得だ。本来は2003年から景気が回復した段階でゼロ金利をやめるべきだったが、「リフレ派」の大合唱のおかげで金利の正常化が3年おくれたのだ。
http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/c32eff099b0c3fd1e42d4ec41223c0b0
こうした考え方に対し、むしろこの人が普段強調する自己責任の観点から、この人のお株を奪うような歯切れの良さで反論しているのが中国共産党の機関紙、というのも皮肉といえば皮肉である。
借りたお金で派手に消費していた人が破産した途端に「初めから貯蓄しなければよかったのに」と他人を責める。このようなロジックはいかなる国の道徳ではかっても荒唐無稽としか言えないだろう。…資金の使い方を間違え、21世紀の米国が本当に必要としている場所に資金を投じなかったのは、米国自身の責任だ。
「金融危機の原因は中国の高貯蓄率」は責任逃れ -- pekinshuho
このようにきちんと自国の国益優先の考えに基づいて主張すべきことを主張する国から見たら、借りたお金で派手に消費していた人が破産した途端に「貸した私が悪いんです」と進んで責任を買って出る主張は、お人よしを通り越して不気味に見えるだろう。