2019-01-01から1年間の記事一覧

ほぼキャッシュレスの信用経済における交換の媒介としての貨幣

というNBER論文が上がっている。原題は「On Money as a Medium of Exchange in Near-Cashless Credit Economies」で、本ブログでは昨年暮れのエントリの注でungated版にリンクしたことがある。著者はここで紹介したNBER論文のコンビであるRicardo Lagos(NYU…

経営危機に陥った銀行は本当に再生への賭けを行うのか?

というNBER論文が上がっている。原題は「Do Distressed Banks Really Gamble for Resurrection?」で、著者はItzhak Ben-David(オハイオ州立大)、Ajay A. Palvia(通貨監査局)、René M. Stulz(オハイオ州立大)。 以下はその要旨。 We explore the action…

政府債務の優劣構造

というNBER論文が上がっている(2年前のWP)。原題は「The Seniority Structure of Sovereign Debt」で、著者はMatthias Schlegl(上智大*1)、Christoph Trebesch(キール世界経済研究所)、Mark L.J. Wright(ミネアポリス連銀)。 以下はその要旨。 Sover…

高圧経済におけるインフレの展望:フィリップス曲線は死んだのか、それとも冬眠しているだけか?

というNBER論文が上がっている。原題は「Prospects for Inflation in a High Pressure Economy: Is the Phillips Curve Dead or is It Just Hibernating?」で、著者はPeter Hooper(ドイツ銀)、Frederic S. Mishkin(コロンビア大)、Amir Sufi(シカゴ大)…

金融危機をモデル化する際に取り込むべき4つの事実

をSF連銀のPascal Paulが同連銀のEconomic Letterで挙げている(H/T Mostly Economics)。 以下はその結論部。 This Economic Letter describes four empirical facts about financial crises: (1) crises are rare, (2) they occur out of credit booms, (3…

米短期金融市場の異変?

デビッド・ベックワースとStephen Williamsonが最近の米短期金融市場の動きに首を捻っている。 その動きとは、2018年初めまでは IOER > FF金利 > 翌日物レポ金利 ≳ ON-RRP金利 の関係が概ね成立していたのが(ただし、IOER=超過準備預金への付利、ON-RRP=…

経済政策は絶望死を減らせるか?

というNBER論文が上がっている(H/T Economist's View)。原題は「Can Economic Policies Reduce Deaths of Despair?」で、著者はWilliam H. Dow、Anna Godøy、Christopher A. Lowenstein、Michael Reich(いずれもUCバークレー、GodøyとReichは労働雇用研究…

全ての価格、経済の価値

今回ジョン・ベイツ・クラーク賞を受賞したエミ・ナカムラの業績を「The Price of Everything, the Value of the Economy: A Clark Medal for Emi Nakamura!」と題したエントリでA Fine Theoremブログが紹介している(H/T Economist's View)。 以下はそこか…

経済地理の逆襲

「Economic geography bites back」という小論をブルッキングス研究所のIndermit Gillが書いている。以下はその冒頭部。 Ten years ago, Paul Krugman won the Nobel Prize in Economics, and the World Bank published the World Development Report “Resha…

服用量が毒を作る

Peter Bofingerというドイツ(!)・ヴュルツブルク大の経済学者が、表題のパラケルススの格言を引用して、Social Europe上でMMT擁護論をぶちあげている(H/T Economist's View)。 そこで彼はMMTをISLMの枠組みで捉え、MMTはIS曲線を右シフトすると同時に(…

高齢化が中立利子率を低下させる

28日エントリでは労働力人口の高齢化が経済活力を下げるというミネアポリス連銀の研究報告を紹介したが、セントルイス連銀の研究者(Sungki HongとHannah G. Shell)も高齢化が中立利子率を低下させるという考察を示している(H/T Mostly Economics)。 Demo…

MMとMMTの比較表

最近MMTが俄かにかまびすしくなったので、本ブログを通じて昔MMTを少し齧った記憶を基に、米国版リフレ派とでもいうべきマーケットマネタリスト(MM)との簡単な比較表を作成してみた。 ハイパワードマネーの源泉 信用創造 経済安定化のための政策目標 政策…

実質実効為替相場とグローバルバリューチェーン

Nikhil PatelとShang Jin Weiという2人の経済学者が、自分達の論文*1を基に、現在の実質実効為替相場の計算方法が時代にそぐわなくなっているとProject Syndicateで論じている(H/T Mostly Economics)。 Standard calculations of the REER by most central…

労働力人口の高齢化により経済の活力が低下した

という主旨のミネアポリス連銀WPを同連銀のRegion誌が紹介している。論文の著者はNiklas Engbomで、Region誌記事を書いたのはDouglas Clement。 以下は記事の概要。 労働力人口の45歳以上の割合は1980年代には30%以下だったが、現在は45%近くになっている。 …

[経済]マイナス名目金利と銀行貸し出し経路 予定より遅れましたが、再開します(ただし更新頻度は以前よりも落とす予定)。表題のNBER論文をサマーズやエガートソンらが書いている(2人によるVoxEU記事)*1。原題は「Negative Nominal Interest Rates and th…