労働力人口の高齢化により経済の活力が低下した

という主旨のミネアポリス連銀WPを同連銀のRegion誌が紹介している。論文の著者はNiklas Engbomで、Region誌記事を書いたのはDouglas Clement。
以下は記事の概要。

  • 労働力人口の45歳以上の割合は1980年代には30%以下だったが、現在は45%近くになっている。
  • Engbomの考えによれば、高齢化した労働者は現状にかなり満足しているため、新しい職を求めたり起業したりする機会コストが高くなり、その頻度が少なくなる。
  • このことの「合成的な」影響は、マクロ経済においてさらに「均衡効果」をもたらす。職を創出するのは主に若い企業であるため、起業の減少によって新たな職も少なくなり、職の移動性も減少する。また、高齢の労働者は同ポジションの若い労働者よりも一般に賃金が高いため、若い労働者が相対的に少ないと起業者にとっての労働コストが高くなる。
  • この理論を検証するための数理モデルでは、それぞれが労働ないし企業の動学に関する独立な仮説を表す3つの要素を結合している必要がある:
    1. 創造的破壊を通じて企業の動学と成長を捉える質的梯子見解(quality ladder view)
      • 技術の普及により企業の盛衰が生じるため、企業は連続的に生まれたり死滅したりする
    2. 労働の移動性における職梯子モデル(job ladder model)
      • 労働者は転職することにより所得を改善する
    3. 起業の選択(entrepreneurial choice)
      • 個人がキャリアの中で新たな職を求めるか、起業するか、現状に留まるかの選択を行う
  • モデルがデータに上手く適合することを確認した上で、Engbomは定量的な評価を行った:
    • 労働力人口の高齢化は、1986年から2016年に掛けての新たな企業の創出低下の4割と、職の再配分の低下の6割以上を説明した。また、職から職への移動性の低下の8割以上を説明した。
    • 経済全体の成長は年間0.3%ポイント低下した。また、モデルによれば、高齢化により賃金格差が拡大し、労働分配率が低下した。