貨幣の伸びとインフレの関係についての注意書き

というIMF論文をMostly Economicsが紹介している。原題は「A Note of Caution on the Relation Between Money Growth and Inflation」で、著者はHelge Berger(IMF)、Sune Karlsson(エレブルー大)、Pär Österholm(同)。
以下はその要旨。

We assess the bivariate relation between money growth and inflation in the euro area and the United States using hybrid time-varying parameter Bayesian VAR models. Model selection based on marginal likelihoods suggests that the relation is statistically unstable across time in both regions. The effect of money growth on inflation weakened notably after the 1980s before strengthening after 2020. There is evidence that this time variation is related to the pace of price changes, as we find that the maximum impact of money growth on inflation is increasing in the trend level of inflation. These results caution against asserting a simple, time-invariant relationship when modeling the joint dynamics of monetary aggregates and consumer prices.
(拙訳)
我々は、ハイブリッドな時変パラメータのベイジアンVARモデル*1を用いて、ユーロ圏と米国で、貨幣の伸びとインフレの二変数の関係を評価した。周辺尤度に基づくモデルの選択が示すところによれば、その関係は時系列的に両地域で統計的に不安定である。貨幣の伸びがインフレに与える影響は、1980年代以降に顕著に弱まった後、2020年以降に強まった。この時変性は物価の変化のペースに関係しているという証拠がある。というのは、貨幣の伸びのインフレへの影響の最大値は、インフレのトレンド水準とともに増加することを我々は見い出したからである。以上の結果は、貨幣総量と消費者物価の同時的な動学をモデル化する際に、時間について不変な単純な関係を主張することへの警鐘を鳴らしている。

貨幣総量については「貨幣は重要である:広義のディビジア貨幣と名目GDPのコロナ禍不況からの回復 - himaginary’s diary」で紹介したようにディビジア貨幣総量を使う方が良いという研究もあるが、それを上記のモデルに当てはめた結果も知りたいところである。また、日本についての結果も知りたいところである。

*1:この手法が提示された論文はこちら