というNBER論文が上がっている(ungated(SSRN)版)。原題は「A Portfolio Approach to Global Imbalances」で、著者はZhengyang Jiang(ノースウエスタン大)、Robert J. Richmond(NYU)、Tony Zhang(FRB)。
以下はその要旨。
We use a portfolio-based framework to understand what drives the decline of the U.S. net foreign asset (NFA) position and the reversal in returns earned on the US NFA (exorbitant privilege). We show that global savings gluts and monetary policies widened the U.S. NFA position, while investor demand shifts partially offset this widening. Moreover, U.S. privilege declined after 2010, in accordance with increasing foreign demand for U.S. equity. We also highlight a quantity dimension of the U.S. privilege: the U.S. can issue substantially more debt than other countries for a given yield increase.
(拙訳)
我々は、米国の対外純資産残高の低下ならびに米国の対外純資産から得られる収益(法外な特権)の逆転をもたらす要因を理解するため、ポートフォリオに基づく枠組みを用いた。世界的な貯蓄飽和と金融政策が米国の対外純資産のマイナス幅を拡大した*1半面、投資家の需要の変化が部分的にその拡大を打ち消した。また、米国の特権は、米国株への海外の需要が増えたことに応じて、2010年以降低下した。我々はまた、米国の特権の量的な側面に焦点を当てた。米国は所与の利回りの上昇について、他国よりもかなり多くの債務を発行できる。
内容的にここで紹介した論文に近い研究のようである(参考文献として挙げている)。ただ、そちらの論文では、海外投資家の米国の債券から株式へのシフトが再評価効果を通じて米国の対外純資産のマイナス幅を拡大させた、と論じたのに対し、今回の論文では、そうした再評価効果によるマイナス幅拡大を認めつつも、債券から株式への投資家の需要のシフト自体は、債券を多く発行している米国の対外純資産のマイナス幅拡大のブレーキ役になった、と分析している。
*1:この論文ではwidenという言葉をマイナス幅の拡大という意味で用いている(本文に「we see that the U.S. NFA position widened (i.e. became more negative) by an average of 9.4% each year in our sample period.」という記述がある)。