という主旨のコラムを、カリフォルニア大学アーバイン校ポール・メラージ経営大学院名誉教授であるリチャード・B・マッケンジー(Richard B. McKenzie)がeconlibに書き、それをTim Taylorが取り上げた。
以下はそのコラムの一節。
The food-supply chain in the United States burns a total of 10.3 quads of fossil-fuel-based energy. (A "quad" is a very large measure of energy: 1×1015 BTU; a BTU is the amount of energy needed to raise the temperature of one pound of water by one degree Fahrenheit.) The basic problem is that food energy actually produced equals only 1.4 quads, which is about 13.5 percent of the energy absorbed in production. Then, between a third and a half of that potential food energy is wasted at one stage of production or another.
Moreover, the human body is also not very efficient at converting the potential energy in the food it consumes into useful work: Only about 15 percent of the potential energy in food eaten goes into activities such as walking, as well as maintaining all bodily functions. This means that the energy that the human body actually converts into work is meager percentage-wise—something on the order of 1.3 percent of the fossil fuel energy that is used along the entire length of the food-supply chain.
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Derek Dunn-Rankin, a professor of engineering at the University of California, Irvine and an avid environmentalist, computes that a 180-pound person walking one mile to and from work at a pace of two miles per hour will burn 200 calories above the 2,000 calories burned each day to maintain the body's basic metabolism. However, the production of those 200 calories in food takes fifteen to twenty times as much energy in the form of fossil fuels. This means that driving a high fuel economy car (40 miles per gallon) will use, in fossil fuel energy, only about two-thirds to one half the energy that the person uses in replacing the calories expended on walks. (Heavier walkers use even more energy when they walk and when they replace the greater calories they expend in moving their weight.) Energy use and pollution do not have a one-to-one correspondence, which causes Dunn-Rankin to conclude, "My bottom line would be that walking can be 1.5 to 2 times more polluting than driving (if you use a high mileage car). If you use a monster car, you are better off walking always."
(拙訳)
米国の食糧サプライチェーンは全部で10.3クワッドの化石燃料エネルギーを消費する(「クワッド」はエネルギーの尺度の非常に大きな単位であり、1×1015 BTUである;BTUは1ポンドの水を華氏にして1度上昇させるのに必要なエネルギー量である)。根本的な問題は、実際に生産された食物のエネルギーは1.4クワッドに相当するに過ぎない、という点にある。それは生産で消費されたエネルギーの約13.5%である。そして、その食物に含まれる潜在エネルギーのうち1/3から1/2は、生産の各段階で失われる。
しかも、人間の体は、消費する食物に含まれる潜在エネルギーを有用な活動にあまり効率的に転換することができない:歩行のような活動、および体の全機能の維持に向けられるのは、食された食物に含まれる潜在エネルギーの約15%に留まる。このことは、人間の体が実際に活動に転換するエネルギーは、食糧サプライチェーンの全過程で使われる化石燃料エネルギーのパーセントにして僅か1.3%レベルに過ぎないことを意味する。
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カリフォルニア大学アーバイン校工学部教授で熱心な環境保護主義者でもあるデレク・ダン−ランキンの計算によれば、180ポンドの人が時速2マイルの速さで通勤に片道1マイルを歩いた場合、体の基礎代謝を維持するのに一日に消費される2000カロリーに加えて、200カロリー余分に消費される。この200カロリーを含む食物の生産には、15倍から20倍の化石燃料エネルギーが必要となる。従って、燃費の良い車(40マイル/ガロン)を運転すれば、歩行によって消費されたカロリー量を補うためのエネルギーに比べ、化石燃料エネルギーにして2/3ないし半分のエネルギーで済むことになる(体重がもっと重い人は、歩行およびその体重を移動させるのに消費したカロリー量を補う際のエネルギー消費量も多くなる)。エネルギーの使用と環境への影響は一対一で対応しているわけではなく、ダン−ランキンは「(燃費の良い車を使った場合)歩くことは車を運転するのに比べて1.5から2倍環境汚染につながる可能性がある、というのが私の結論だ。燃費の悪い車の場合は、歩くほうが常に良いだろうが」と結論付けている。
これにジャーナリストブロガーのTim Stuhldreherが反発し、以下の3点を指摘している。
- 人が歩くことについて食糧サプライチェーンの全過程を考慮するならば、車についてもそうすべき。車の生産の追加エネルギーの推定値は10%から100%の間(ここ、ここ)と幅があるが、50%から100%とするならば、1マイル当たりの話はイーブンになる。
- ダン−ランキンの結果は燃費の良い車を使うことに依存している。
- 1マイル当たりの比較は、人は基本的に歩くよりも長い距離を車で走行する、という明白かつ重要なポイントを無視している。また、本当に歩行と車の影響を比較するのであれば、車が普及するにつれてスプロール現象が起き、通勤距離が伸びる、という点も考慮すべき。歩きでの通勤が片道1マイルという想定は良いにしても、米国の平均通勤距離は2005年時点で片道16マイルである。
なお、このうちの第1点に関連した話としてマッケンジーの元記事では、電気自動車の平均走行距離は50000マイルであるのに対し生産には80000マイル走行に相当するCO2排出を伴い、同じ走行距離の同型のガソリン車より環境に悪い、というビョルン・ロンボルグの報告が紹介されている。