中原伸之化していたスヴェンソン

リクスバンク副総裁のラース・スヴェンソンが、11/14の講演において、同銀行の理事会における自分の立場を率直に説明しているサムナーブログのコメント経由のラース・クリステンセン[Lars Christensen]経由)。


以下はその冒頭部。

It can scarcely have escaped the attention of those who follow monetary policy in Sweden that the members of the Executive Board have held differing opinions for some time now. Most people have probably also noted that a minority of the Executive Board members – consisting of my colleague Karolina Ekholm and myself, in case anyone was not aware of this – has advocated a more expansionary monetary policy than the one that has been conducted and that the Riksbank intends to conduct in accordance with the repo-rate path advocated by the majority during the coming period.
(拙訳)
スウェーデンの金融政策をご覧になっていた方なら否応無しにお気づきだったと思いますが、ここ暫く、理事会メンバーの意見は割れております。またほとんどの方は、理事会メンバーの少数派――ご存知無い方のために申し添えておきますと、私の同僚のカロリーナ・エクホルムと私がそれに相当します――が、これまで実施された政策、ならびに、今後多数派の提唱するレポ金利の経路に従ってリクスバンクが実施する予定の政策に比べて、より拡張的な金融政策を提唱してきたことにお気づきだったと思います。


講演の終盤では、その意見の違いを以下のようにまとめている。

As I have discussed, much of the debate conducted has been based on the differences in opinion regarding whether household debt entails risks to financial stability and the macro economy, whether monetary policy is a suitable means for influencing household debt and whether it is worth holding back inflation and keeping unemployment up to reduce the risks of indebtedness. As according to extensive research in the field, monetary policy has little effect on household debt but large, negative consequences in the form of low inflation and high unemployment and there are more effective means that are already used, I draw the conclusion that monetary policy should not be used to try to influence debt. Moreover, in my opinion it is not clear that the current level of household debt entails any risks to financial stability or the macro economy. But once again – potential risks should and can be managed using other means than monetary policy. Monetary policy should instead be aimed at maintaining price stability and attaining the lowest sustainable rate of unemployment.
(拙訳)
これまで述べてきましたように、交わされてきた議論の多くは、家計の負債が金融の安定とマクロ経済にとってリスクとなるか、金融政策が家計の負債に影響を与える上で適切な手段か、負債のリスクを減じるためにインフレを抑え失業率を高めにしておくべきなのか、という点に関する意見の違いに基づいておりました。この分野での多岐に亘る研究によりますと、金融政策が家計の負債に及ぼす影響は小さい一方で、低インフレと高失業という形で大きなマイナスの効果をもたらしますし、既に実績のあるもっと効果的な手段がある、ということから、私は、金融政策を負債に影響を与える試みに用いるべきではない、という結論に達しました。また、私の見解では、現在の家計の負債水準が、金融の安定やマクロ経済にリスクをもたらすかは不明であります。しかし、繰り返しになりますが、リスクがあるとしても、それは金融政策とは別の手段で管理すべきであり、かつ、そうした管理は可能です。その代わりに金融政策は、物価安定の維持と継続可能な最低の失業率の達成という目標に向けられるべきであります。


ちなみにクリステンセンは、(ここで取り上げた記事を知ってか知らずか)現在の職場に不満があるらしいスヴェンソンを安倍自民党総裁は日銀に招けば良いではないか、解決策を持っているわけだから、と冗談を飛ばし、サムナーブログのコメンターも、日本人がそれで失うものは何も無い、と応じている。


ただ、クリステンセンもサムナーも市場マネタリストの教義が自民党に採用された、と勘違いしているようで、サムナーブログの(日本語が読めるらしき)別のコメンターが、いや、自民党の3%の名目成長率の達成手段は金融政策に限っているわけではない*1、と訂正している。


(さらにちなみにだが、クリステンセンは、名目GDP目標に興味のある日本人経済学者と接触したい、とエントリに書いているので、ご興味のある経済学者はエントリで示されているメールアドレスにメールしてみては如何。)

*1:cf. ここ