下記の本の著者であるアナトール・カレツキー(Anatole Kaletsky)がThe Browserに登場している(Mostly Economics経由)。
Capitalism 4.0: The Birth of a New Economy in the Aftermath of Crisis
- 作者: Anatole Kaletsky
- 出版社/メーカー: PublicAffairs
- 発売日: 2010/06/22
- メディア: ハードカバー
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この本については例えばここに日本語の書評があるが、その「4.0」という意味を彼は以下のように説明している。
This crisis is going to be viewed as the fourth historic transition that capitalism has gone through since the modern market economy was created in the late 18th century. The argument that I make in my book on the crisis – perhaps one of the few predictions in it that has been fully realised – is that this was not just another financial boom and bust, nor a crisis in one particular country or one part of economy. This was, and still is, a crisis of the entire global economy of a kind that has only happened three times before.
I compare this crisis with the great inflation of the late 1960s and 1970s, which created a completely new form of capitalism – Thatcherism and Reaganomics were totally different from the Keynesian social democracy they replaced. The previous systemic transformation started with the Russian Revolution and culminated with the Great Depression. This also created a new form of capitalism, almost unrecognisable from the classical capitalism of the 19th century. And the systemic crisis before that was the one that created liberal capitalism in the first place – the American and French revolutions that broke down agrarian aristocratic economies and established the market-oriented capitalist globalisation that Marx so vividly described.
So in my view this is the fourth systemic crisis of capitalism, and it’s going to give rise to a new kind of capitalist system. One still based on private property, competition and profits, but fundamentally distinct from the classic capitalism of the 19th century – from the government-led Keynesian economics of the postwar period, and from the Reagan and Thatcher market fundamentalism of the last 30 years.
(拙訳)
今回の危機は、近代市場経済が18世紀後半に形作られて以降に資本主義が経験した4番目の歴史的転換点として見られるようになるだろう。私の本で主張したことは――その本での予言のうち完全に実現した幾つかのうちの一つということになると思うが――この危機は単なるいつもの金融の好不況ではなく、ある一国もしくは経済の一部分に限られる危機でもない、ということである。この危機は、過去に3回だけ発生した全世界経済の危機である。
私はこの危機を、1960年代末から1970年代に掛けての大インフレに準えている。その大インフレはまったく新しい形の資本主義を生み出した――サッチャリズムやレーガノミクスは、それに取って代わられたケインズ主義的な社会民主主義とはまったくの別物だった。その前のシステムの転換は、ロシア革命に始まり、大恐慌で頂点に達した。これもまた、19世紀の古典的資本主義とは似ても似つかぬ新しい形の資本主義を生み出した。そして、その前のシステムの危機は、そもそも自由主義的資本主義を生み出したものだった――米国とフランスの革命は、農業に立脚した貴族主義的な経済を打ち壊し、マルクスが活写したような市場志向的な資本主義者によるグローバリゼーションをもたらした。
ということで、私の見解によれば、これは資本主義の四番目のシステム的な危機であり、新種の資本主義システムを生み出すもの、ということになる。それはやはり私有財産や競争や利益に基づいたシステムとなろうが、19世紀の古典的資本主義とも、戦後の政府が主導するケインズ主義的経済とも、過去30年間のレーガンないしサッチャー的な市場原理主義とも根本的に異なるものとなるだろう。
そしてカレツキーは、これまでの3回の転換はいずれも政治と経済ないし政府と市場の関係を巡るものだったが、今度の転換も、両者の役割分担の新たな均衡を見い出すものとなるだろう、と述べている。ただし、それが実際にどのようなものになるかについて本の後半でいろいろと推測はしているものの、そうした予言が当たった試しは無い(マルクスやプラトンですら失敗した)、とも断っている。
なお、このThe Browserインタビューでカレツキーは、恒例に従って注目する5つの本を挙げているが、その中でサンデルの以下の本を挙げている。
- 作者: マイケル・サンデル,Michael J. Sandel,鬼澤忍
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2012/05/16
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