ブライアン・カプランが公共選択論の試験で以下の問題を出したところ、期待した回答を書いたものは誰もいなかったと言う。
The Kim family has ruled North Korea for three generations. Doesn't the stationary bandit model imply that the country should be prospering? If so, what's wrong with the stationary bandit model? If not, why not?
(拙訳)
金家は三世代に亘って北朝鮮を統治してきた。定住型盗賊モデル*1によれば、国は繁栄しているべきではないか? もしそうならば、定住型山賊モデルのどこが間違っているのか? もしそうでないならば、それは何故か?
そして後続エントリでは、そのエントリのコメント欄にも期待した回答を書いたものはいなかったとして、以下のように“正解”を書いている。
The Kim dynasty is clearly durable: it's ruled North Korea for 64 years and three generations. But it's much harder to tell if the Kim dynasty is stable - i.e., if it could survive a diverse array of disturbances.* The Kims have clearly weathered a few big storms: the Korean War, the collapse of the Soviet Union and drastic decline in energy subsidies, and the death of two leaders. But for the most part, the Kims keep such a tight lid on things that no one, not even Kims themselves, knows whether reforms would spiral out of control and end their rule.
The stationary bandit model fails to clearly distinguish durability from stability. But on reflection, the model's hopeful implications presuppose not mere durability, but stability. A stationary bandit who knows he'll retain power whatever he does has a solid selfish motive to adopt pro-growth policies. But the latest scion of a rigid thousand-year dynasty can't afford to be so open-minded. He knows a formula for holding power; but for all he knows, it's the only formula. Even if there's merely a 10% chance that reform brings the regime crashing down, that's a big deterrent.
(拙訳)
金王朝は明らかに耐久力を有している。それは北朝鮮を64年、三世代に亘って統治してきた。しかし、それが安定的であるかどうかは分からない。即ち、様々な一連の障害が襲い掛かった時にそれを乗り越えられるかどうかは不明だ*2。金王朝は確かに、朝鮮戦争、ソ連の崩壊とエネルギー供給の激減、二人の指導者の死といった幾つかの大きな嵐を乗り越えてきた。しかしそれは大部分、極めて強固な引き締め策によって乗り越えてきたのであり、誰も――金王朝自身ですら――改革を行ったら収拾がつかなくなって彼らの統治が終焉してしまうかどうかは分からない。
定住型盗賊モデルは耐久性と安定性を明確に区別できていない。しかし考えてみれば、このモデルは耐久性だけでなく安定性も暗黙裡に仮定しているのだ。何をしようとも自分が権力を維持できることが分かっている定住型盗賊には、成長政策を採るべき確固たる利己的な動機が存在する。しかし、数千年に亘って厳格な支配を行ってきた王朝の末裔には、それほど開放的な政策を採る余裕は存在しない。彼は権力を維持する方程式を知っているが、彼の知る限りそれは唯一の方程式である。仮に改革が体制を転覆させる可能性が10%でも存在するならば、それは改革を抑止する大きな要因となる。
ただしカプランは、エクスカリバーの台詞を引用しつつ、支配者が自分が本当に安定的かどうかを確認するには、実際に試してみる以外に知る術は無いことを認めている。