都市の産業が偏るのは良くないのか?

という点について論じた記事をEd Glaeserが書いているMostly Economicsタイラー・コーエン経由)。


そこで彼は、産業の集積を重視する経済学者としてアルフレッド・マーシャルケネス・アロー、ポール・ローマーの3人を挙げている。一方、産業の多様性を重視する論者としてジェイン・ジェイコブズを挙げている。彼自身が20年ほど前に両者の主張を検証する実証分析を行ったところ、ジェイコブズに軍配を上げる結果が得られたという。


今回、改めて同様の分析を行ったところ、以下のような結果が得られたとの由。

  • 1977年から現在までの期間について300都市を調査。産業集中度を表わす指標として、1977年時点の各都市における上位4産業の賃金シェアを用いた。
  • その結果、集中度が高いほど、1980-2010年の人口の伸び率も、1980-2000年の実質中位所得の伸び率も低いことが分かった(実質中位所得の終了期が2000年になっているのは、2010年のセンサスの変更が同年における比較を困難なものとしたため)。
  • 最も分散化が進んだ都市は、人口にして60%以上、所得にして25%以上の成長を成し遂げた。逆に、最も分散化が進んでいない都市では、人口の伸びは23%以下、所得の伸びは16%以下に留まった。
  • 1月の気温、平均的な企業規模、製造業の雇用比率、大卒人口比率、といった成長に関連する要因をコントロールした場合、10%集中度が高まると、1980-2010年の人口成長は3.3%低まり、1980-2000年の所得成長は3%低まることが分かった。
  • この結果は統計的に有意で経済的にも意味があるものの、他の要因に比べさほど重要度が高いわけではない。例えば1980年時点の大卒人口比率が10%高いと、1980-2010年の人口成長は18%高まり、1980-2000年の所得成長は8%高まる。従って、産業の多様化よりも学校教育の方が重要。

この結果を踏まえてGlaeserは、ニューヨークも金融業への依存比率を減らした方が良いが、それは金融業を毀損するような形ではなく、他の産業をもっと振興するような形で行うべき、と提唱している。