ブルッキングス版沸騰都市

ブルッキングス研究所が、2014年から2016年に掛けての雇用と一人当たりGDPの伸びに基づく2018年版の世界都市成長ランキング(Global Metro Monitor)を出し、そのトップ10をmedium記事で紹介している(H/T Mostly Economics)。
以下はその概要。

  • 10位:厦門(中国)
    • 台湾海峡に面しており、商業の空路、陸路、海路の要衝に位置している。 福建省経済特区と一帯一路の一部であることから、中央政府の大きなインフラ投資の恩恵を受けている。そのほか、金融サービスも景気が良い。また、厦門大学には、コーネル大やジョージタウン大やマギル大など北米の26の大学と交換プログラムがある。
  • 9位:天津(中国)
    • 中国の4つの直轄市*1の1つで、行政区画としては省と同格。2014年には上海と寧波舟山港に次いで中国第3の港となった。運輸のほか、技術開発への大幅な公共投資を通じて、AIでも国内をリードしている。ただ、2015年の倉庫爆発事故に見られるような、成長に伴う歪みも抱えている。
  • 8位:福州(中国)
    • 厦門と同様、これまでは製造業が中心だったが、サービス経済への転換を図っている。中国の省で2番目のeコマース移出を誇る福建省の枢になっており、eBayは32.3万平方フィートの工業団地を2018年に開設予定。なお、前回のランキングでもトップ10入りしている。
  • 7位:マニラ(フィリピン)
    • 人口は1320万で、パリやLAと同規模。マニラ首都圏GDPの36%を占める。国際的な海運業やビジネスプロセスのアウトソーシングが成長の原動力となった。他のアジアの大都市と同様、急速な成長による課題にも直面しており、マニラ首都圏開発局が準備している新地域開発計画では、従前からの過密問題にインフラ開発で対応しようとしている。
  • 6位:デリー(インド)
    • 人口1900万で、ムンバイに次ぐインド第2の都市圏。ニューヨーク都市圏より約100万人少ないが、ニューヨークの人口は停滞が予想されている一方、デリーは2030年に4000万近くになるとされる。何百万というインド人が、生活水準の高さを求めてデリーに移り住もうとしている。デリーの一人当たりGDPは、国平均の3倍である18,600ドルである。デリー政府は教育、環境、運輸に大きな権限を持っているが、中央政府との権限争いを最高裁で繰り広げている。急速な都市化により、過密や汚染の問題も深刻化している。2017年11月には、デリーの米大使館の大気観測所で汚染の最高記録が観測され、市のトップが汚染状況を厳しく非難する事態を招いた。
  • 5位:北京(中国)
    • 天津と同様、中国の首都も省と同格である。北京の人口は2000年の1350万から2016年には2170万に増加し、メキシコ市と同等になった。経済成長や国内移住者のパターンはメガ都市以外にシフトしつつあるとは言え、北京は上海と共に依然として国の経済を左右している。北京で議論の的となっている市内への移住は政府が厳しく管理している。
  • 4位:サンフランシスコ(米国)
    • ベイエリアの中心地として、サンフランシスコは米国の技術発展の原動力となってきた。デジタルとバイオテク産業での独自の優位性により、投資や才能を惹き付け、一人当たりGDPを伸ばし、2016年には10.1万ドルに達した。ブルッキングスのU.S. Metro Monitorで、成長・繁栄・包括関係の指標すべてが改善した米11都市部の一つ。しかし、今後の成長の維持のためには、大きな人種的・経済的分断の縮小や、住宅コストの問題への対処に努める必要がある。
  • 3位:成都(中国)
    • 中国南西部の四川省省都である成都の人口は1100万。沿岸の省から離れていることから、海外直接投資の主要な対象となり、長年に亘って国内で最も速く成長している都市部の一つとなっている。成都の指導者は科学とテクノロジーを次の成長産業と見定め、地域を国の発展しつつあるテクノロジー拠点の一つにしようとしている。
  • 2位:サンノゼ(米国)
    • サンフランシスコと同様、シリコンバレーを擁するサンノゼも、テクノロジーの著しい発展によって顕著な雇用創出と所得成長を経験した。過去5年の雇用創出、生産性、中位の賃金の伸びは、全国の都市部でほぼトップだった。しかしサンフランシスコと同様、より包括的な経済を急いで発展させる必要に迫られている。
  • 1位:ダブリン(アイルランド
    • ダブリンが一位になったのは、ほぼ前例の無いほど高い一人当たりGDP成長によるところが大きいが、それは強い経済と、GDPを推計する統計手法の綾による。多国籍企業の多くは節税目的で法的にダブリンに拠点を置いているが、実際に財やサービスを当地で生産しているわけではない。そうした企業の中には海外で実施している委託製造の額を増やしたものがあったが、それは統計上、地域ならびに国のGDP会計で輸出として計上される。ダブリンはITや創造的な産業や金融サービスにおいて依然として魅力的な都市である。

ちなみにレポートを見ると、ダブリンの2014-2016年の一人当たりGDP成長率は21.2%となっている。なお、この300都市部のランキングに入った日本の都市部は、東京(71位)、大阪・神戸(178位)、静岡(201位)、名古屋(207位)、広島(217位)、岡山(239位)、仙台(240位)、北九州・福岡(243位)、札幌(246位)である。