ヘッジファンドのリターンはボラティリティが低い?

少し前に、ヘッジファンドのクロスセクションの分散化が進んだ、というダラス連銀のレポートを紹介したことがあった。おそらくその話とコインの裏表の関係になるのではないかと思われるが、ヘッジファンド指数*1の時系列で見たボラティリティが株式(S&P500)より低い、という結果がこちらのブログで報告されている(タイラー・コーエン経由)。


それによると、2011年のリターン自体を比較すると、ヘッジファンドのリターンは-8.87%で、ほぼフラットだった株式には大きく負けている。しかし、月次リターンの推移を見ると、株式が大きく下げた9月にはそれほど下がらず、その代わり株式が大きく上げた10月にもそれほど上がらなかったので、ボラティリティは株式より低くなっているという。また、そのように株式に比べてヘッジファンドボラティリティが抑えられたのは2011年に限った話ではなく、2009年から2011年を通じて同様の傾向が見られるという*2。こうした傾向はヘッジファンド株式投資への慎重姿勢が影響していると見られるが、こちらのブルームバーグ記事によれば、2012年に入ってもその慎重姿勢は続いているとの由。


これに対し同ブログエントリのコメント欄では、選択バイアスや自己相関が影響してヘッジファンドの見掛けのボラティリティが低くなっているのではないか、というコメントが複数付き、あるコメントでは参照論文としてジョン・コクランの論文にリンクしている。それに対しブログ主は、より最近かつ包括的な研究では、優れたヘッジファンドボラティリティが確かに低いことが示されている、としてシェリダン・ティットマンらの論文にリンクして反論している*3

*1:Hedge Fund Research Global Hedge Fund Index。HPはこちら

*2:ただしブログ主(New York Law SchoolHouman B. Shadab)は具体的な数値は示しておらず、グラフのみを示している。グラフはimg src=文で簡単に引用できる形式ではないので、ご覧になりたい場合は上述のリンク先に飛んで頂きたい。

*3:安定した収益を上げ人気を集めていたヘッジファンドがとんでもない食わせ物だったことが明らかになって大騒ぎしている日本からすると、少し眉に唾したい気にさせられる話ではあるが…。