仮想通貨のリスクとリターン

というNBER論文が上がっている。原題は「Risks and Returns of Cryptocurrency」で、著者はイェール大のYukun LiuとAleh Tsyvinski。Marginal Revolutionで取り上げられているほか、日本の仮想通貨関連の各サイトでも紹介されている(ここここここここ)。
イェール大のニュースサイトのTsyvinskiへのインタビューから概要を簡単にまとめると、以下の通り。

  • 株式のリターンを説明する155リスクファクターでリターンを説明しようとしたが、どのファクターでも説明できず。通常の通貨(ユーロ、豪ドル、加ドル、星ドル、英ポンド)、貴金属(金、銀、プラチナ)のリターンとも関連無し。
  • ただしモメンタム効果は見られた(リターンが20%を超えると買う、という戦略が奏功)。また、グーグル検索やツイッターなどで投資家の注目度が高まるとリターンが高まる効果も見られた(同時に、ネガティブな言及が増えるとリターンが低下する効果も観測)。
  • マイニングコスト、(株価における配当利回りに相当する)ファンダメンタル要因と価格の比率、およびボラティリティはリターンに対する予測力なし。
  • ビットコインの価値がゼロになる崩壊確率は0.3%。通常通貨についての同確率は、ユーロが0.009%、豪ドルが0.003%、加ドルが0.005%。
  • 米国の354産業、中国の137産業への影響を表す指数を作成したところ、医療と消費財ビットコインに対し有意な正のエクスポージャーを持つが、金融、小売、卸売は全く持たない、という結果が得られた。また、イーサリアム技術が金融業界に大きな影響を与える可能性がある、と市場が考えているという実証結果が得られた。ビットコインには無い代替決済手段であるスマートコントラクト機能のためと見られる。
  • 投資家としてビットコインが過去のパフォーマンスを継続すると考えるならば、ポートフォリオへの組み入れ比率は6%が適正。パフォーマンスが半分になると考えるならば、4%が適正。さらに悪化すると考えるならば、その比率は1%となる。