不況期には社会的機関への信頼度が下がる

という論文をジャスティン・ウルファーズとベッツィー・スティーブンソンが書いているMostly Economics経由)。


以下はその論文の図表。

最初の表は、米国における各機関に対する信頼度を調査したアンケートにおいて、高い信頼度を示した比率を失業率で時系列回帰したもの。パネルが3つに分かれているのは、3種類の調査結果について分析したためである。

これを見ると、回帰係数の絶対値という点では銀行がいずれの調査でも最も大きく、いずれの係数も(少なくとも10%水準で)有意である。これは直近の不況が大いに影響していると思われる。例えばパネルAのギャラップの調査では、銀行に高い信頼性を寄せた人の割合は、2007年の42%から2010年には23%まで落ちたとのことである。この間に失業率は5%上昇しているので、そのうち、失業率上昇分に回帰係数を乗じたおよそ13.5%の低下は景気循環によるもの、ということになる。パネルCについて同様の計算を行うと、やはり直近の銀行への信頼の低下のうち半分は景気循環によるもの、という結果が得られるという。パネルBの銀行の係数もパネルCと近い値だが、ただし、こちらは2008年までしかデータがないので、同様の計算はできなかったとの由。
また、議会ないし議員に対する信頼性の低下にも失業率が有意に効いている。大企業に対する信頼性についての回帰係数も概ね議会のものと似たような値を取っているが、ただし、パネルAのギャラップ調査については有意では無い。
一方、最高裁に対する信頼性に関しては有意性が見られず、新聞ないしジャーナリストに対する信頼性については一貫した結果が得られていない。


また、次の図は、今次の不況について各国間でクロスセクション分析をしたものである。ここでも、失業率が高まると、特に金融機関や政府への信頼度が低下したという傾向が伺える。


そして次の表は、上図の結果を回帰分析で確認したものである。ただしここでは、国と年の固定効果のほか、回答者の属性(性別、年齢、婚姻区分、居住地域[都市/地方]、学歴)のダミー変数も説明変数に加えている。


最後の表は、米国のデータにおいて、州と年の固定効果を説明変数に加えることにより、州固有の失業要因――全国平均からの乖離――の係数を推定したものである。この分析においても回答者の属性(性別、年齢、人種、学歴)についてのコントロールを行っている。

ここでも概ねこれまでと同様の傾向が観察されるが、ただし係数の大きさはこれまでより小さい。