1/25エントリでは、The Browserというサイトがアンドリュー・ゲルマンに5つの推薦図書をインタビューしていたことを紹介したが、同サイトでは同様の企画をロバート・シラーについても行なっていた。このシラーのインタビューは、ワシントンブログやThe Big Pictureやマンキューブログなどでリンクされている。
以下がそのシラーの5つの推薦図書である(邦訳があるものはそれも併せて示した)。各書についてのシラーのインタビューの中から、パンチラインと小生が勝手に判断した文章も併記しておく。
The Theory of Moral Sentiments (Penguin Classics)
- 作者: Adam Smith,Amartya Sen,Ryan Patrick Hanley
- 出版社/メーカー: Penguin Classics
- 発売日: 2010/01/26
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- 作者: アダムスミス,Adam Smith,水田洋
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2003/02/14
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I think this underlies how the economy works. We start out with selfish feelings, which are intermixed with feelings of empathy for others, and then we develop this mature desire to be praiseworthy. I think it is central to our civilisation that people do that.
(拙訳)
こういったことが経済の機能の根底にあると私は思います。即ち、我々にはまず利己主義的な感情がありますが、そこにやがて他者への共感が入り込み、それから我々は、称賛するに値するようになりたいという成熟した欲求を持つようになります。人々がこうした感情を持つことが、我々の文明の根幹にあると私は思います。
The Passions and the Interests: Political Arguments for Capitalism Before Its Triumph
- 作者: Albert O. Hirschman
- 出版社/メーカー: Princeton Univ Pr
- 発売日: 1997/01/06
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- 作者: アルバート O.ハーシュマン,佐々木毅,旦祐介
- 出版社/メーカー: 法政大学出版局
- 発売日: 1985/10
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...the kind of criticism that Hirschman emphasises is a kind of criticism which may be in Marx but is not a major theme. The criticism is that capitalist society is so good at reducing our passions to passions about business, that we become a kind of vulgar, lowbrow society – it doesn’t serve the spiritual interests of people.
(拙訳)
・・・ハーシュマンが強調するような(資本主義への)批判は、マルクスも唱えていたかも知れませんが、マルクスの主たる主張になるようなものではありませんでした。その批判とは、資本主義社会は、我々の情熱をビジネスへの情熱という形に減退させる術に非常に長けているので、我々の社会をいわば大衆的で粗野な社会にしてしまい、人々の精神面という点では有益なものとならない、というものです。
Nudge: Improving Decisions About Health, Wealth, and Happiness
- 作者: Richard H. Thaler,Cass R. Sunstein
- 出版社/メーカー: Penguin Books
- 発売日: 2009/02/24
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- 作者: リチャード・セイラー,キャス・サンスティーン,遠藤真美
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2009/07/09
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So in this context, Nudge is advocating a libertarian style of paternalism – a free-choice version of what Singapore is doing.
Yes, that’s right – by nudging people, rather than caning them.
(拙訳)
Fault Lines: How Hidden Fractures Still Threaten the World Economy
- 作者: Raghuram G. Rajan
- 出版社/メーカー: Princeton Univ Pr
- 発売日: 2010/05/04
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- 作者: ラグラム・ラジャン,伏見威蕃,月沢李歌子
- 出版社/メーカー: 新潮社
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I don’t think those really can be explained entirely in terms of these fault line theories. ‘Let them eat credit’ was a factor, but I think that there was something else. There was a change in thinking that explained both the bubbles and the public policy. It’s something more permanent, more sociological.
(拙訳)
私は、2000年代前半の住宅市場における投機バブルが、ラジャンの大断層理論で完全に説明できるとは思いません。「低所得者層に信用を供与しておけ」という政治姿勢も一つの要因だったでしょうが、それ以外の原因があったと思います。社会における思想の変化があり、それがバブルと公共政策の双方の説明になっているのです。それは、ラジャンの指摘する要因よりは、もっと恒久的、かつ、もっと社会学的なものなのです。
- 作者: Jacob S. Hacker,Paul Pierson
- 出版社/メーカー: Simon & Schuster
- 発売日: 2011/03/15
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In the US, we’ve seen a rapid concentration of wealth at the extreme high end. The top tenth of a per cent of the top hundredth of a per cent of the population is getting wealthy very fast. They point out that this is not true in Europe, and yet the economies are very similar and growing at similar rates. If the technology is the same, why would there be a difference at the extreme high end? And they argue that the answer is really political. There have been political changes in the US that allow the extreme high end to garner more wealth. Ultimately, it represents a failure of our society to take account of the fact that the extreme high end can lobby and can organise for its own interests, and we’ve let it happen.
(拙訳)
米国では、上位のほんの一握りの人々に富が急速に集中しました。人口の100分の1%のそのまた10分の1%が非常に急速に豊かになったのです。著者たちは欧州ではそうではないことを指摘しています。経済は良く似ており、成長率も似たようなものにも関わらず、です。もし技術が似たようなものならば、なぜ上位の少数者にそうした違いが生じたのでしょうか? 彼らは、その答えはまったく政治的なものである、と言います。米国に政治的な変化が生じ、上位のごく少数者がもっと富を蓄えることを許容するようになった、というのです。煎じ詰めて言えば、上位の少数者が自らの利益のためにロビー活動をしたり組織を作ったりすることができるという事実を我々の社会が考慮せず、そうしたことを野放しにしてしまった、というわけです。