先週、World Business Forumなる催しでクルーグマンが講演したらしい。WSJブログとフェリックス・サーモンがその内容を報告している(Economist's View経由)。
両者の報告によると、講演の概略は以下の通り。
- GDPベースでは、米国の景気後退は終了し、成長を取り戻しつつある。しかし、失業は悪化傾向が止まらない。従って、景気後退が終わったとしても、苦しい時はまだ続く。
- 金融の技術革新はその多くが規制を巧みにかいくぐったという代物で、評価に値するものではなかった。
- バーナンキの対応が素早く、崖っぷちから戻るのが早すぎたため、金融改革の必要性が浸透しなかった。
- 多くの経済予測者は、5年で元に戻ると言うが、自分はそれより悲観的。金融危機の成長への悪影響は持続しがちである。ましてや、今回の金融危機は最悪の部類に属するので、完全な回復にまでは非常に時間がかかるだろう。
- 回復が遅れる要因の一つは、国際貿易の底が抜けたことにある。今回の貿易面の悪化は大恐慌時よりひどい。
- 国際貿易は、いわば病気の感染拡大の役割を果たした。比較的健全な金融システムを持つ国にも危機の影響が及んだ。実際、住宅バブルと金融システム問題を抱えた米国やスペインよりも、輸出国家であるドイツや日本の経済の方が悪化した。
- 世界経済はかつてないほど一体のものとなっている。1990年から2007年の間に、貿易の比重(特に生産に対する比率)は大きく上昇した。それはコンテナ輸送の発達と、IT流通システムの発展のためである。それにより、幾つもの国にまたがる生産が可能になった。それ自体は良いことで、商品は安くなり、我々の購買力は増した。だが、その良き時代も今や終わりを告げた。
- 貿易がもはや以前のように伸びないということは、世界経済にとって一種の桎梏である。経済危機から脱する時、輸出に頼ることが多いが、世界全体で貿易黒字を計上することはできない。