Econbrowserのジェームズ・ハミルトンの紹介に沿って、その批判を箇条書きにまとめてみる。
- LIBOR-OISスプレッドのような金利差はデフォルトリスクを反映したものであり、流動性不足を反映したものではなかった。従って、TAF(入札型ターム物貸し出し)がスプレッド縮小に効果を発揮しなかったのも驚くべきことではない。
ハミルトンは、テイラーの指摘はFRBにすべての責めを負わせるという点で行き過ぎの感もある、と断りつつ、基本的には同意している*2。
エントリの中で、ハミルトンは
I read Taylor's evidence as providing further support for the view that when we ask too much of monetary policy, it can do more harm than good.
(拙訳)金融政策に多くを求めすぎると、益よりも害が大きい、という(ハミルトン自身が以前のエントリで示した)見方を支持する証拠をテイラーが提供しているように読めた。
"You can't blame a guy for trying," the saying goes. But one reading of Taylor's evidence is that we might be quite justified in doing just that.
(拙訳)「頑張っている奴を非難することはできない」とよく言われる。しかし、テイラーの挙げた証拠を見ると、そのような非難も大いに正当化できると言えそうだ。
と書いており、FRBの行き方に危うさを感じていることを滲ませている*3。
なお、上記ペーパーだけでなく、テイラーがその一員であるWorking Group on Global Marketsの最近の活動はここで読める(そこが、かの元大統領が創立したフーバー研究所というのも何だか皮肉な気がするが…)。
*1:なお、これについては、本年半ばのクルーグマンを初めとする経済学者の議論では、投機が商品価格高騰をもたらしたことには否定的な見解が優勢だった(cf. 本ブログのこれ以前のエントリ)。
*2:ただ、その書き方がやや分かりにくいため、関連するEconLogのエントリのコメント欄では、ハミルトンの真意を訝るコメントも見られた
*3:急いで付け加えておくと、ハミルトンは、直近のエントリでは「But while the Fed may have little control over the spreads between different interest rates, it does have a significant degree of control over the inflation rate.」と書いており、基本線ではFRBの現在のリフレ政策を支持している。彼が気にしているのは、一般的な物価水準だけでなく、資産価格やリスクにまで影響を与えようとする姿勢である。