というNBER論文が上がっている。原題は「Do Workers Undervalue COVID-19 Risk? Evidence from Wages and Death Certificate Data」で、著者はCong T. Gian, Sumedha Gupta、Kosali I. Simon、Ryan Sullivan、Coady Wing(Sullivanは海軍大学院、他はインディアナ大)*1。
以下は著者の一人によるSSRN論文に対する9/28時点の解説ツイート。
Our latest research on “Do Workers Undervalue COVID-19 Risk – Evidence from Wages and Death Certificate Data” has been accepted in the Journal of Risk and Uncertainty! Joint work with @RyanSul03070993 @DrSumedhaGupta, @KosaliSimon and @coady_wing
https://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=4967808
As COVID-19 mortality surged in 2020-2021, the virus quickly became a critical workplace hazard, particularly for essential workers and those in high-contact occupations. In contrast, remote work and office-based jobs saw much lower levels of risk
Economic theory suggests that increased risk should lead to compensating differentials. Our findings reveal that labor markets did respond to these heightened health risks by adjusting equilibrium wages.
However, workers appeared to undervalue COVID-19 risks compared to traditional physical hazards- even though, as the saying goes, a death is a death.
This may be due to incomplete information, the availability of remote work, or wage rigidity despite greater sectoral reallocations in the US labor market than EU countries.
(拙訳)
我々の最新の研究「労働者はコロナ禍のリスクを過小評価しているのか? 賃金と死亡診断書のデータによる実証結果」がジャーナル・オブ・リスク・アンド・アンサーティンティにアクセプトされた! @RyanSul03070993、@DrSumedhaGupta、@KosaliSimonおよび@coady_wingとの共同研究である。
https://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=4967808
2020-2021年にコロナ禍による死亡数が急増した時、特にエッセンシャルワーカーおよび人との接触が多い職業に就いている人にとって、そのウィルスはすぐに重大な労災となった。一方、在宅勤務とオフィスを拠点とする職業ではリスクレベルはそれよりもかなり低かった。
経済理論が示すところによれば、リスクの増大は報酬の違いをもたらすはずである。我々の発見は、労働市場が確かに均衡賃金の調整によってこうした健康リスクの高まりに反応したことを明らかにした。
しかし労働者は、良く言われるように死は死であるにもかかわらず、コロナ禍のリスクを従来の物理的な労災に比べて過小評価したように見える。
この原因は、不完全情報、在宅勤務の利用可能性、あるいは、賃金の硬直性――米国の労働市場ではEU諸国より部門間の再配分が大きかったが――かもしれない。
死亡データはCensus of Fatal Occupational Injuries - Wikipedia、賃金データはCurrent Population Survey - Wikipediaのものを用いたとの由。
コロナ禍による死亡リスクが0.1%高まると、フルタイムの労働者の週給は24ドル多くなるが、コロナ禍以外の労災による死亡リスクが0.1%高い時には320ドル多いという。コロナ禍以外の死亡リスクに対する賃金プレミアムは、労働者が死亡リスクとお金とのトレードオフに用いている統計的生命価値(VSL)が約1800万ドルであることを示しているが、これは従来の研究におけるVSL推計の上限に近い。一方、コロナ禍に対する賃金プレミアムが含意するVSLは124万ドルから154万ドルであり、標準的なVSL指標よりもかなり小さい、とのことである。
*1:cf. 共著者が一部重なっているコロナ禍に関する以前の研究=COVID-19疫病への官民の反応の追跡:州・地方政府の行動に基づく実証結果 - himaginary’s diary。