グローバル投資家にとってどの為替相場が問題となるのか?

というBIS論文をMostly Economicsが紹介している。原題は「Which Exchange Rate Matters to Global Investors?」で、著者はKristy Jansen(南カリフォルニア大)、Hyun Song Shin(BIS)、Goetz von Peter(同)。
以下はその要旨。

How do exchange rates affect the asset allocation of bond portfolio investors? Using detailed security-level holdings, we find that euro area-based investors systematically shed sovereign bonds as the dollar strengthens, confirming the role of the dollar as a global risk factor even for euro-based investors. More distinctively, they also shed local currency bonds when the euro strengthens, due to currency mismatches on their own balance sheets. There is no such effect for foreign currency bonds of the same sovereign issuers. These findings are consistent with a Value-at-Risk portfolio choice model that brings out separate roles for local, foreign and reference currencies.
(拙訳)
債券ポートフォリオ投資家の資産配分に為替相場はどのように影響するのだろうか? 詳細な証券レベルの保有データを用いて我々は、ユーロ圏の投資家はドルが強くなるとソブリン債を体系的に削減することを見い出した。これは、ユーロをベースとする投資家にとってさえドルがグローバルリスクファクターとしての役割を果たすことを確認するものである。より特徴的なのは、彼らはユーロが強くなると、自分のバランスシート上の通貨ミスマッチにより、現地通貨建て債券も削減する。同じソブリン債発行者の外貨建て債券についてはそのような影響は無い。以上の発見は、現地通貨、外貨、および基準通貨に別々の役割を担わせるバリューアットリスクのポートフォリオ選択モデルと整合的である。

ここでユーロを基準通貨とする投資家を対象としたのは、国際金融と貿易におけるドルの支配的な役割から生じる効果と分離して通貨の影響を識別するため、との由。
新興国の通貨が対ユーロで減価した場合、外貨建て債券の信用リスクが上昇する半面、現地通貨建て債券には影響しないはずだが、投資家は主に現地通貨建て債券の方を売却する。これは、彼らが発行国の通貨ではなく、自分が保有する債券の通貨を重視し、自分のバランスシート上の基準通貨ベースのミスマッチを気にしていることを示している、とのことである。