というNBER論文が上がっている(ungated版へのリンクがある著者の一人のページ)。原題は「Constructing Quarterly Chinese Time Series Usable for Macroeconomic Analysis」で、著者はKaiji Chen(エモリー大)、Patrick C. Higgins(アトランタ連銀)、Tao Zha(エモリー大)。
以下はその要旨。
During episodes such as the global financial crisis and the Covid-19 pandemic, China experienced notable fluctuations in its GDP growth and key expenditure components. To explore the primary sources of these fluctuations, we construct a comprehensive dataset of GDP and its components in both nominal and real terms at a quarterly frequency. Applying two SVAR models to this dataset, we uncover the principal drivers of China's economic fluctuations across different episodes. In particular, our findings underscore the distinct impacts of consumption-constrained shocks on household consumption and its various subcomponents throughout the Covid-19 pandemic.
(拙訳)
世界金融危機やコロナ禍のような時期に中国は、GDP成長率と主な支出項目の顕著な変動を経験した。こうした変動の主要な原因を追究するため我々は、四半期の頻度の名目および実質のGDPとその項目の包括的なデータセットを構築した。このデータセットに2つのSVARモデルを適用して我々は、異なる時期の中国の経済的変動の主要な要因を明らかにした。具体的には、コロナ禍の時期を通じて、家計消費とその様々な下位項目に対する消費制約的なショックの相異なるインパクトを我々の発見は浮き彫りにした。
導入部によると、中国の国家統計局のGDP四半期データ(著者たちは「GDP-va」と呼んでいる)は2008年から2016年に掛けて過度にスムーズであることがFernald et al. (2021*1 )で指摘されているほか、各種の内訳項目の利用可能性に難があり、かつ、それらの整合性が必ずしも取れていない、との由。そのため著者たちは、自分たちで包括的な支出ベースのGDPデータセットとその主要な支出項目を構築することにし(このGDPを著者たちは「GDP-exp」と呼んでいる)、それを用いて2000年以降の変動要因を追究することにした、とのことである。
GDP-expの作成方法としては、Fernald et al. (2021)に倣って、8つの四半期指標からトレンドを除去することなしに第一主成分を取り出し、それで補間する形でGDP-expとその項目の四半期系列(全て季節調整値)を構築したという。それらの項目では公式統計に見られた過度な平滑性は見られなかったとの由。
このデータにBrunnermeier et al. (2021*2 )の構造ベクトル自己回帰による変動要因の識別手法を適用したところ、例えば世界金融危機においては外生的なショックによる輸出入の収縮が見られたが、投資と家計消費には見られなかったという。一方、コロナ禍では家計消費支出が打撃を受け、特に教育・文化・娯楽および食料・煙草・酒類が落ち込んだが、住宅の落ち込みは比較的小さかったとのことである。
以下は論文の実質成長率の寄与度分解図。
以下は家計消費の伸びの寄与度分解図。