というNBER論文が上がっている(ungated(世銀)版)。原題は「Is Social Protection a Luxury Good?」で、著者はMichael Lokshin(世界銀行)、Martin Ravallion(ジョージタウン大学)、Iván Torre(世界銀行)。
以下はその要旨。
The claim that social protection is a luxury good—with a national income elasticity exceeding unity—has as been influential. The paper tests the “luxury good hypothesis” using newly-assembled data on social protection spending across countries since 1995, treating the pandemic period separately, as it entailed a large expansion in social protection efforts. While the mean income share devoted to social protection rises with income, this is attributable to multiple confounders, including relative prices, weak governance in low-income countries and access to information-communication technologies. Controlling for these, social protection is not a luxury good. This was also true during the pandemic.
(拙訳)
社会的保護が、国民所得の弾力性が1を超える奢侈財であるという主張は影響力を持っている。本稿は、1995年以降の各国の社会的保護支出の新たに収集されたデータを用いて「奢侈財仮説」を検証する。社会的保護の大きな拡大を伴ったことからコロナ禍の時期は分離して扱う。社会的保護に費やされた平均所得比率は所得とともに上昇したものの、これは相対価格*1、低所得国での弱いガバナンス*2、情報通信技術へのアクセス*3といった複数の交絡要因*4に帰せられる。それらをコントロールすると、社会的保護は奢侈財ではない。そのことはコロナ禍の時期についても当てはまる。
*1:本文の説明によれば、医療などの社会的保護の食料に対する相対価格が高所得国で高くなることから、その政府支出も大きくなる、という仮説を検証している。
*2:本文の説明によれば、ガバナンスの弱い政府は、(1)国民のニーズに応えない、(2)社会的保護以外も含めた公的支出を行う能力が低い、(3)社会的保護を賄う歳入が確保できない、という仮説を検証している。
*3:本文の説明によれば、ICTへのアクセスが悪い低所得国政府では社会的保護への支出が高くつく、という仮説を検証している。
*4:他には高所得国では高齢者が多いことから社会的保護支出も多くなるという仮説や、高所得国の方が社会的保護支出の報告が完備していることから所得に対する勾配の推計値に上方バイアスが掛かるという仮説も検証している。