というNBER論文(原題は「Exchange Rates and Uncovered Interest Differentials: The Role of Permanent Monetary Shocks」)をコロンビア大のStephanie Schmitt-GrohéとMartín Uribeのコンビが上げている(ungated版、スライド資料)。
以下はその要旨。
We estimate an empirical model of exchange rates with transitory and permanent monetary shocks. Using monthly post-Bretton-Woods data from the United States, the United Kingdom, and Japan, we report four main findings: First, there is no exchange rate overshooting in response to either temporary or permanent monetary shocks. Second, a transitory increase in the nominal interest rate causes appreciation, whereas a permanent increase in the interest rate causes short-run depreciation. Third, transitory increases in the interest rate cause short-run deviations from uncovered interest-rate parity in favor of domestic assets, whereas permanent increases cause deviations against domestic assets. Fourth, permanent monetary shocks explain the majority of short-run movements in nominal exchange rates.
(拙訳)
我々は一時的ならびに恒久的な金融ショックがある場合の為替相場の実証モデルを推計した。米英日のブレトンウッズ以降の月次データを用いて結果として、以下の4つの主要な発見を報告する。第一に、一時的もしくは恒久的な金融ショックのいずれに対しても、為替相場のオーバーシュートは発生しない。第二に、名目金利の一時的な上昇は増価をもたらすが、金利の恒久的な上昇は短期的な減価をもたらす。第三に、金利の一時的な上昇は、国内資産に有利なカバー無し金利平価からの短期的な逸脱を引き起こすが、恒久的な上昇は国内資産に不利な逸脱を引き起こす。第四に、恒久的な金融ショックは名目為替相場の短期の動きの大部分を説明する。
ここで「国内資産に有利なカバー無し金利平価からの短期的な逸脱」は、内外金利差ほど減価が進まないことを指し(国内金利をi、海外金利をi*、実質為替の減価率をeとして、it - i*t - et+1 >0)、「不利な逸脱」はそれ以上に減価が進むことを指している。
以下は論文の本文やスライド版からのポイントの抜き書き。
- ドーンブッシュ(1976*1)の為替のオーバーシューティング効果では、金融政策の流動性効果、カバー無し平価、長期の購買力平価を基に、拡張的な金融ショックは通貨の減価をもたらし、その程度は長期よりも短期が大きい、とされた。
- その後の研究では、2つの主な結果が見い出された。
- 金融引き締めは、即時もしくは遅れた増価を引き起こし、それはオーバーシューティングを伴う。
- ドーンブッシュ・モデルの基本仮定に反し、金融ショックに伴うカバー無し平価は成立せず、引き締めは国内資産の過剰リターンをもたらす。
- 今回の研究では、金融ショックに対する為替相場のオーバーシューティングは生じなかった。このことは、既存のオーバーシューティングの結果は恒久的なショックと一時的なショックを混同した結果である可能性を示唆している。
- ショックが恒久的な場合、実質為替の減価は短期においても名目為替の反応よりもかなり小さい。ショックが一時的な場合は同程度。このことは、金融ショックについては、名目と実質の為替相場が短期的に並行して動くというムッサ(Mussa)のパズル*2が、一時的な金融ショックでは成立しても、恒久的な金融ショックでは有意に成立しない、ということを示している。
- Uribe(2018*3)で四半期について見い出された新フィッシャー効果は、今回の研究で月次についても見い出された。