グローバル・リバランシング

「Global Rebalancing」と題したブログエントリでAntonio Fatasが、ここ20年間の世界の経常収支バランスの推移を概観している
それによると、まず、危機前の10年間(1998-2008、Fatasは「Global Imbalances period(世界不均衡時代)」と呼んでいる)は以下のように総括される。

  • 産油国、中国、アジアの先進国(日本、韓国、シンガポール、台湾)、および世界のその他の地域(新興国など)では経常黒字が増えていた。
  • ユーロ圏の経常収支はかなりバランスが取れていた。
  • 米国の経常赤字が他国の経常黒字を吸収していた。

そして、2008年以降には以下のような事象が起きた。

  • 中国の経常収支は急速にバランスに向かっている(IMFは今後2年でバランスすると予測している)。
  • 産油国の経常収支はバランスに向かっており、2015-2016年には原油価格の下落のために僅かながら経常赤字になった。
  • ユーロ圏は大きな経常黒字にシフトした(黒字地域の中で最大の黒字)。
  • アジア先進国は黒字を維持ないし増やした。
  • 米国は引き続き他国の黒字を吸収した。
  • 2008年には多くの新興国は貯蓄者だったが、2018年には経常黒字国はすべて先進国になっている(ユーロとアジア)。

その上で、アジア先進国の経常黒字の内訳について以下の点を指摘している。

  • かつては日本が黒字の大部分を占めていたが、近年は韓国、台湾、シンガポールが増え、3ヶ国合計で日本を上回っている。
  • 全体の規模は世界GDP対比で以前とそれほど変わらない。各国のGDP比では増えている。

また、ユーロ圏の経常黒字の内訳について以下のような指摘を行っている。

  • ドイツ、ユーロの経常赤字国、ユーロの経常黒字国の3グループに大別すると(ドイツを除く2グループは2000-2008年の経常収支のパターンで判断)、2000年代にはドイツが経常黒字を大きく増やした一方、経常赤字グループは赤字を大きく増やした。
  • 2008年以降、経常赤字国は急速にリバランスし、赤字から黒字に転換した、一方、ドイツは経常黒字の対世界GDP比を維持した(自国GDP比では増やした)。