She's a killer Queen

日本をダシに財政赤字の恐怖を警告したNYT記事をディーン・ベーカーが攻撃している


ベーカーの該当記事への指弾は以下の通り。

  • 問題のNYT記事では、2008年の日本の国債利払費が財政の5分の1に達すると書いて、米国の10分の1という数字と対比させているが、実際の日本の利払費比率は11.2%であり、米国のピークは1991年の16%だった*1
  • 記事は、歯止めの利かない財政拡大、貯蓄率低下による経常収支の赤字転落とそれに伴う金利上昇、そしてそれによる日本の債務不履行の危険性、インフレと円暴落の懸念、といった事柄についての金切り声の警告で溢れているが、それらの警告を支持する事実はほとんど示されていない。
  • 市場はNYTと違って日本の破綻を懸念していない。人々は1%強の金利しか付かない10年物国債を喜んで保有している。円は下がるどころか(記事も言及しているように)上がっている。日本のここ10年以上にわたる懸念はデフレであり、インフレではない。
  • 記事は高齢化に伴う経常収支の赤字転落の恐怖を煽り立てているが、それは予期されていることである。まさにその点で、これまでの経常黒字が役に立つのだ。経常黒字によって蓄積された対外資産により、高齢化した社会が利子収入を得ることができるからである。
  • 結局、この記事には内容が無い。NYTは米国の財政赤字を恐れるあまり、日本について嘘をでっち上げた。


(ちなみに記事を書いたNYT女性記者は、日本のネット界隈ではあまり評判良くないようだ。)


なお、ベーカーは、続くエントリで、今度はワシントンポストの記事(第二次大戦の膨大な財政赤字をうまく処理できたからといって今度もうまくいくとは限らないと警告した記事)を槍玉に挙げている。



[追記]クルーグマン取り上げた

*1:ベーカーは11.2%という数字をこの財務省資料(日本語版はこちら;HTML版はこちら)の4ページ目から拾っている。同資料によると、元本返済分を含んだ国債費は24.3%になるので、NYT記事はそちらの数字を参照したものと思われる。ちなみに米国財政を解説したこのサイトによると、"Money the Treasury collects from selling securities and disbursed by repayment of principal is viewed as financing and is not counted as receipts or outlays."とのことなので、米国では、国債の元本返済分は、歳入・歳出の枠外で扱われるらしい。また、このサイトには"Borrowing is not defined as receipts, and debt repayment is not defined as outlays. If they were, the budget would virtually be balanced by definition."と書かれているが、日本はまさにそのbalanced by definition方式を取っていることになる。