昨日に続き、テイラーのクルーグマンへの反論エントリを紹介してみる。
表題の2/13エントリ(原題は「It’s Not About Conspiracy Theorizing, It’s About Effectiveness」)でテイラーは、2010年にテイラーとポール・ライアンが書いた論説*1を槍玉に挙げたクルーグマンに反論した*2。以下はその概要。
- QE1が効果をもたらさなかったということについて、テイラー=ライアンの唯一の証拠は、「経済を強化できなかった」ことだった、とクルーグマンは言う。そのことをクルーグマンは、「今朝外に出た時に寒かったのでコートを着た。しかしそれは効かなかった、何となれば依然として寒かったからだ」と表現している。
- しかし証拠はある:
- Johannes Stroebelとテイラーの計量経済学研究(2010、後にInternational Journal of Central Bankingに掲載)
- リッチモンド連銀のEcon Focusに掲載されたインタビューでジョン・コクランが解説した基礎的なファイナンス理論
- 危機時における金融政策の役割に関する自分の研究に基づく簡単なサマリーはこちら*3
- そこで自分は2008年秋の危機の前後の金融政策を批判したが、危機の最中の金融政策は批判していない
- テイラー=ライアン論説では、以下の点も指摘した:
- 来るQE2は経済の不確実性を増す。前例の無いほど拡大したバランスシートをいつどのように縮小するかFRBは分かっているのか、という点についての合理的な疑いがその主たる要因だ。
- こうした量的緩和政策は、FRBを信用割り当てなどの財政政策の領域に巻き込むが、それは本来は議会の仕事。
- それに対するクルーグマンの反論は、論説が「陰謀論」に陥った、というもの*4。この非難は的外れも甚だしい。論説では個人にも陰謀にも言及していないし、そもそも他人に一切言及していない。論文で明確に述べたのは、中銀の独立性の喪失、ならびにルールベースの政策からの乖離に対する懸念。そうした懸念は多くの人々がしばしば表明しているものである。陰謀論などへの懸念ではない。