6日に紹介したラグラム・ラジャンのフォーリン・アフェアーズ論文を巡る議論について、タイラー・コーエンがエントリを上げている。
そこで彼は、自分とマンキュー以外のラジャン論文支持派としてジョン・コクランとNYTコラムニストのDavid Brooks*1を挙げている。だが、Brooksはコラムの中でラジャン論文の一節を引用しただけで、論文全体を評したわけではない。またコクランのエントリを読むと結構批判も散りばめられており、単純に支持派に分類して良いか疑問な気もする。
そのコクランの批判というのは、彼の立ち位置からして当然ながら、左派系とは基本的に方向が逆向きである。簡単にまとめると以下の通り。
- 多くの誤った政策が現在の苦境に導いたというのは同意だが、政府が格差是正のために住宅や信用の供与を援助したという主張はいかがなものか。もっと様々な要因が絡んでいるのではないか。
- 教育の問題を指摘した箇所では、教職員組合や公立学校の官僚制を槍玉に挙げるかと思いきや、政府による新たな教育プログラムを推奨している。過去20年間失敗してきた政府にまた問題解決を託すとはこれ如何に? しかも医療や雇用についても同じようなことを書いている。
- ラジャンはドッド・フランク法を支持しているが、この法案は、ラジャンが批判したファニーとフレディよりまだ性質が悪い。
対するコクランの推奨策は、これまた当然のごとく規制緩和と競争促進だが、コメント欄ではノアピニオン氏が姿を見せ、ブッシュ子政権時代を考えると規制緩和の見返りは今や小さくなっているのでないか、という疑問を投げ掛けている。
コーエンはまた、短期と長期を分離して考えることに疑問を呈したエズラ・クラインのブログエントリを取り上げ、短期の刺激策と長期の投資の相反関係は確かに存在する、と反論している。その上で、その選好については割引率が問題になるのだ、と論じている。
コーエンのエントリの後半は専らクルーグマン批判に費やされているが、そこでも、クルーグマンは自分の好む割引率を明確にすれば良いだけの話だ、と書いている。そのほかに、以下の点でクルーグマンを批判ないし揶揄している。