盗まれた街・続き

5日に紹介したジェームズ・ハミルトンへの批判に対し、ハミルトンが反論した


以下、簡単なまとめ。

デロングへの反論
今日の準備預金が将来に短期国債ではなくM1になるならば、今日においても短期国債と準備預金が等価ではなくなる、というデロングの主張には同意。しかし、それは期待を通じた効果である。だからこそ、大規模な資産購入は、金利への直接的・機械的な効果に意味があるのではなく、将来の金融政策に関する信頼できるシグナルを送るのに使えることに意味がある、と主張しているのだ。従って、FRBの決定すべき重要なことは、大規模な資産購入の額ではない。それを導入する枠組みを明確に設定し、かつ、それによってもたらされる財務管理の問題にも気を配ることが重要なのだ。2%を下限とするインフレ率という現在の金融政策は、その両方の目的を満たしている*1
サムナーへの反論
FRBが2%以上のインフレを達成することが可能であるという点では、サムナーとデロングに同意。問題は、その目的達成のために導入する戦略の頑健性。特に、ドルからの逃避ならびにFRB財務省の信頼喪失を懸念している。デフレ脱却に際してはそうした事態は起こり得ないが、例えば3.5%のインフレ率を目標に掲げた場合は起こり得るのではないか。その懸念の有無が自分とサムナーらFRB批判派との違いになっている。FRBが有しているツールはあまりになまくらである半面、期待の均衡の安定性は、ひとたび金融市場の参加者が先行きに疑念を抱いた場合でもFRBは数兆ドルのバランスシートをうまく管理できるさ、と自信を持って言うにはあまりにも脆弱である。

*1:これについてはコメント欄でAndy Harlessが、FRBの予測レンジでは2%はむしろ上限に近いのではないか、と指摘している。それに対しハミルトンは、PCEデフレータが2%を割り込んだら量的緩和が行われるものと考えているし、実際にそうなったらそれを支持する、と応じている。