制約された裁量とルール

ルールベースの金融政策を追い求める中でクルーグマンイエレンサマーズの発言に噛みついてきたジョン・テイラーが、今度はバーナンキの発言を槍玉に挙げた


それによるとバーナンキは、FRBは既にルールを導入している、とブルッキングス研究所で述べて皆を驚かせたという。ではなぜ政策ルール法案にFRBは反対しているのだ、という点について彼は、2%のインフレ目標と自然失業率を同等のウエイトで目指し、自分たちの見通しや金利に関する情報を公開するのがFRBのルールだ、と述べたとの由。


それに対しテイラーは、バーナンキの言うルールはテイラーらが長年取り組んできたルール、イエレンが講演で言及してきたルール、フリードマンを有名にしたルールとは別物だ、と述べている。それはむしろ、バーナンキがかつて「制約された裁量」と呼んだ概念に相当する、と彼は指摘する(初出論文FRB理事になりたての頃の講演での言及)。テイラーによれば、バーナンキは、自身が鋭く批判したフリードマン・ルールのようなルールと区別するためにそのような用語を持ち出したとのことである。それはテイラー・ルールが提唱される前にバーナンキが好んでいた概念だという。


しかし、単に数字目標や目的関数を持っていることは、政策ツールという面でのルールではない、とテイラーは反論する。そこには戦略はなく、すべてが戦術ないし裁量になってしまう、と彼は言う。「テイラールールが正しい、ないし概ね正しいルールである、という前提は、既に最先端の考え方では無いと思う」とバーナンキは述べたというが、テイラーは、制約された裁量だけに頼っていると結局裁量の量が多くなり、金融政策については上手くいかない、と指摘している。そして、その点を実際に示した実証結果として、David Papellらの論文を引いている。