イエレンの食言?

引き続きテイラーブログねた。2/242/26エントリで彼は、金融政策ルールの法制化に抗するイエレンを槍玉に挙げている。


2/24エントリでテイラーは、C-SPANから以下のやり取りを引用している。

SENATOR SHELBY: YOU HAVE OPINED ON THE USE OF MONETARY POLICY RULES SUCH AS THE TAYLOR RULE, WHICH WOULD PROVIDE THE FED WITH A SYSTEMATIC WAY TO CONDUCT POLICY IN RESPONSE TO CHANGES IN ECONOMIC CONDITIONS. I BELIEVE IT WOULD ALSO GIVE YOU — GIVE THE PUBLIC A GREATER UNDERSTANDING OF, AND PERHAPS CONFIDENCE IN, THE FED’S STRATEGY. YOU’VE STATED, AND I’LL QUOTE, RULES OF THE GENERAL SORT PROPOSED BY TAYLOR CAPTURE WELL OUR STATUTORY MANDATE TO PROMOTE MAXIMUM EMPLOYMENT AND PRICE STABILITY. YOU HAVE EXPRESSED CONCERNS, HOWEVER, OVER THE EFFECTIVENESS OF SUCH RULES IN TIMES OF ECONOMIC STRESS. WOULD YOU SUPPORT THE USE OF A MONETARY POLICY RULE OF THE FED’S CHOOSING IF THE FED HAD DISCRETION TO MODIFY IT IN TIMES OF ECONOMIC DISRUPTION? >> CHAIR YELLEN: I’M NOT A PROPONENT OF CHAINING THE FEDERAL OPEN MARKET COMMITTEE IN ITS DECISION MAKING TO ANY RULE WHATSOEVER. BUT MONETARY POLICY NEEDS TO TAKE ACCOUNT OF A WIDE RANGE OF FACTORS SOME OF WHICH ARE UNUSUAL AND REQUIRE SPECIAL ATTENTION, AND THAT’S TRUE EVEN OUTSIDE TIMES OF FINANCIAL CRISIS. IN HIS ORIGINAL PAPER ON THIS TOPIC, JOHN TAYLOR HIMSELF POINTED TO CONDITIONS SUCH AS THE 1987 STOCK MARKET CRASH THAT WOULD HAVE REQUIRED A DIFFERENT RESPONSE. I WOULD SAY THAT IT IS USEFUL FOR US TO CONSULT THE RECOMMENDATIONS OF RULES OF THE TAYLOR TYPE, AND OTHERS, AND WE DO SO ROUTINELY, AND THEY ARE AN IMPORTANT INPUT INTO WHAT ULTIMATELY IS A DECISION THAT REQUIRES SOUND JUDGMENT.
(拙訳)

シェルビー上院議員
あなたはテイラールールのような金融政策ルールの使用について意見を述べました。そうしたルールは、経済環境の変化に応じて政策を実施する際の体系的な方法を提供するでしょう。それはまた、FRBの戦略に対する一般の理解を深め、おそらくは信頼をも深めることでしょう。あなたが述べたことを引用しますと、テイラーが提唱した一般ルールは、雇用の最大化と物価の安定という我々の法律上の任務を上手く捉えています。しかしながらあなたは、経済に負担が掛かった際のそうしたルールの有効性に懸念を示しました。経済が混乱した時にFRBがルールを変更する裁量を有する、という条件付きならば、FRBが選んだ金融政策ルールの使用を支持しますか?
イエレン議長
連邦公開市場委員会の意思決定を、どんなものであろうとルールで鎖につなぐという考え方は、私は支持しません。しかし金融政策は様々な要因を考慮せねばならず、その要因のうちあるものは普通とは違い、特別な注意を要するものです。それは金融危機でない場合にも当てはまります。この件に関する最初の論文でジョン・テイラー自身が、1987年の株式市場暴落のような通常とは異なる対応を要する状況について指摘しました。テイラー型やその他のルールが推奨する政策を参照することは我々に取って有用である、というのは私の考えであり、実際に我々が定期的に行っていることです。最終的には健全な判断を要する決定に対し、それらは重要な入力となります。

このイエレン証言についてテイラーは以下のようにコメントしている。

  • 1993年の論文で自分が指摘したのは、1987年の株式市場の暴落がテイラールールからの逸脱があったケースだった、ということ。それは政策ルールの法制化の批判というよりは、そうした法制化がいかに効果的に機能するかの説明だった。その点については、論文に掲載した図参照。

   

  • 1987年に政策ルールの金利は上昇し続けたが、FFレートは引き下げられた。それがジャネット・イエレンが言及した逸脱である。実際にはその逸脱は小さく一時的なものだったが、兎にも角にもFRBは政策ルール法案を遵守しつつそうした政策を容易に取ることができるわけだ。FRB議長は、法案で要求される通り、逸脱についての明確な理由を説明しさえすれば良い。ショックが大きかったことを考慮すれば、逸脱がよほど長引かない限り、そうした説明が難しいとは思われない。この事例は、法案のバグではなく仕様を説明する材料になっている。


2/26エントリでテイラーは、金融政策ルールに関して自ら構築したHPに収録した1996年のイエレン講演論文から引用を行っている。

She describes the rule, and then she carefully discusses “several desirable features” it has “as a general strategy for conducting monetary policy.”

She says that “the framework of a Taylor-type rule could help the Federal Reserve communicate to the public the rationale behind policy moves, and how those moves are consistent with its objectives.” She mentions that she is “certainly not proposing the mechanical use of the Taylor rule.” And she adds correctly that “Nor would Taylor himself.” She indicates that more work should be done to improve on such rules, and that in certain circumstances, which she describes, there could be deviations from the rule.
(拙訳)
彼女は(テイラー)ルールを説明し、それが持つ「金融政策を行う際の全般的な戦略としての」「幾つかの望ましい性質」を慎重に論じている。
彼女は「テイラー型のルールの枠組みは、FRBが政策行動の裏にある理由、ならびに、そうした政策行動がFRBの政策目標と如何に整合的であるかを一般に説明するのに役に立つ」と述べている。彼女は、自分が「テイラールールの機械的な使用を提唱しているわけではない」とも述べている。そして、正しくも、「テイラー自身もそれは提唱していない」と付け加えている。彼女はそうしたルールの改善のためにもっと研究がなされなければならない、と述べ、彼女が説明するところの特定の状況下ではルールからの逸脱もあり得る、と記している。

そして、以下のように続けている。

So one cannot help but be amazed by the exchange of views on the Taylor rule or rules in general between Janet Yellen and Richard Shelby, Chair of the Senate Banking Committee on Tuesday, and between her and Jeb Hensarling, Chair of the House Financial Services Committee on Wednesday. In many respects, her speech makes the case for using monetary policy rules in the way that is called for by the policy rules bill that Shelby and Hensarling were asking her about and she seemed to be objecting to. Some observers indicated that they seemed to be talking past each other. But at the least there should be some common grounds for agreement that could form the basis for progress going forward.
(拙訳)
従って、ジャネット・イエレンが、火曜日にリチャード・シェルビー上院銀行委員会委員長、水曜日にジェブ・ヘンサーリング下院金融サービス委員長との間で交わした、テイラールールないしルール一般についての意見のやり取りには驚かざるを得ない。シェルビーとヘンサーリングは政策ルール法案について彼女の見解を尋ね、彼女は同法案に抵抗しているように思われるが、同法案で要求されている形での金融政策ルールの使用を、彼女の講演は多くの点で支持している。両者は話が噛み合っていない、と言う人もいる。しかし少なくとも、前に進む基盤となる何らかの意見の一致はあるはずである。