ポール・クルーグマンが政策ルールについて御託を並べている

少し前に、テイラールールの法制化に反対する議論を紹介したが、そのうちのクルーグマンの1/31エントリにテイラーが反応し、表題のエントリ(原題は「Paul Krugman Pontificating on Policy Rules」)で概ね以下のようなことを述べている

  • クルーグマンは、「共和党FRBがいわゆるテイラールールに従うことを義務化することを求めている」と述べている。しかし:
    • 法案は、FRBが自分で選んだルールもしくは戦略を説明することを求めているに過ぎず、特定のルールに従うことを求めてはいない。
    • 法案は自分(=テイラー)が考案したルールに言及しているが、単に「参照ルール」として言及しているに過ぎず、「義務として従うべきルール」としているわけではない。
      • FRBの人々はこれまで長年に亘って、このルールについて、ベンチマークや例、もしくは政策変更を訴える際の枠組み――ルール中の実質均衡金利の低下など――として言及しており、それはFRBにおける標準的な慣行を反映したものとなっている。
  • クルーグマンは、テイラールールの歴史に触れた中で、大平穏期の金融政策が同ルールによって上手く描写されたことに異を唱えてはいないし、危機前に政策が同ルールから離れたことによって大平穏期が終焉を迎えたことにも異を唱えてはいない。彼が主張しているのは、乖離は僅かで、経済を悪化させるほどではなかった、ということである。しかし乖離は僅かではなく、経済が同様に悪化した1970年代に匹敵するものだった。その乖離と経済の悪化を関連付ける実証研究は数多くある。例:2007年に自分がジャクソンホールで講演した研究Jarocinski and SmetsAhrend
  • クルーグマンは、ゼロ金利下限は政策ルールで無視に近い扱いを受けたというが、テイラールールに至る自分の研究では明示的に取り込んでいる。
  • クルーグマンは「間違っていたことを認める代わりに一層奇妙な物語を紡ぎ出す」と言うが、自分の2007年の論文は大不況が始まる前に完成していた。また、David Papellらの実証研究*1は、昔からの政策ルールを丁寧に調べたものであり、新たな奇妙な物語を紡ぎ出したわけではない。

*1:[3/9追記]ここで紹介した論文の著者たちによる概ね同内容の研究。