最近、クルーグマンが労働分配率の低下について時折り書いており、それをMBK48さんが訳されている(ここ、ここ、ここ、ここ、ここ)。
そのうちの6/30エントリはクルーグマンの6/21ブログエントリを訳されたもので、さらにMBK48さんによる分かり易い経済学の解説が付け加わっている。そこで示されたクルーグマンの問題意識を小生なりに単純化して解釈すると、次のようになる。
国民所得は、分配面から以下の3項目に分解できる。
国民所得=労働所得+資本所得+超過利潤
ここで超過利潤は完全競争の場合には発生しないが、不完全競争の場合は発生する。その結果、労働所得のみならず資本所得も減少しているのではないか、というのがクルーグマンの第一の問題意識である。
その場合でも、超過利潤が設備投資に回って経済のパイの拡大に貢献しているならばそれほどの問題とはならないかもしれない。しかしアップルに見られるように、企業はその超過利潤を現預金として退蔵しているだけではないか、というのが(他の一連のエントリで示されている)クルーグマンの第二の問題意識である。
企業会計面から上の3項目を見ると、
となる。この内部留保を労働所得に回せ、というのが昨今話題になっている日本共産党の主張であり、クルーグマンはそれほど直截的な解決方法を志向しているわけではないものの、問題意識としては実は共通している、と言えそうである。
ちなみにNick Roweは、クルーグマンの6/21エントリを受けて、技術進歩による金利の低下という観点から、実際の金利の低下傾向と利益率の上昇の乖離を説明しようとしている。
ここで資本所得を資本コストの考え方*1を用いて分解すると、上式は以下のようになる。
労働所得+(金利+リスクプレミアム)+超過利潤
技術進歩によって資本財価格が下がり、それによって金利の低下傾向がもたらされたので超過利潤が増えた、というのがRoweの解釈である*2。